うつ病急性心筋梗塞患者によく認められる病態であり、急性心筋梗塞の予後悪化に関連している。三環系抗うつ薬など従来の抗うつ薬は予後に対する悪影響が懸念されるが、選択的セロトニン再吸収阻害薬SSRI)は、小規模での検討ながら予後に好影響を与えるとの報告がある。

 そこで英国のJ.J.V. Mcmurray氏らは、急性心筋梗塞後大規模臨床試験「VALIANT」症例のうち、抗うつ薬を服用した682例を対象に、非服用の1万4014例と、死亡、致死的・非致死的血管イベントを比較検討(追跡期間3年)、9月4日のポスターセッションで発表した。抗うつ薬服用682例のうち、281例はSSRIを、452例はその他の抗うつ薬を服用しており、51例はSSRIと他の抗うつ薬を併用していた。

 「VALIANT」は、心機能低下を伴う急性心筋梗塞後症例におけるアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)の バルサルタンと、アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬のカプトプリル、および両剤併用の予後改善効果を比較した大規模臨床試験で、プライマリーエンドポイント(総死亡)、セカンダリーエンドポイント(心血管死、心筋梗塞再発、心不全による入院など)共に、バルサルタン群とカプトプリル群、併用群とカプトプリル群の間に有意差はなく、非劣性解析にて、バルサルタン群のカプトプリル群に対する同等性が既に証明されている。
 
 Mcmurray氏によれば、今回の検討における総死亡(非補正)は、SSRI群27.0%、他の抗うつ薬群22.8%、すべての抗うつ薬群24.8 %、非服用群22.5 %だった。致死的・非致死的血管イベント(非補正)は各々43.1%、36.8%、39.1%、35.9%だった。

 一方、多変量解析モデルで補正後のハザード比(非服用群を1とする)を求めると、総死亡はSSRI群1.20、他の抗うつ薬群1.10、すべての抗うつ薬群1.13だった。また補正後の致死的・非致死的血管イベントはSSRI群1.12、他の抗うつ薬群1.00、すべての抗うつ薬群1.10だった。いずれの解析でも有意差は得られていない。

 こうしたデータから報告者は、「ハザード比の信頼区間が広かったものの、抗うつ薬服用が心血管イベントの有意な増加に結び付くことはなかった。SSRIに関しても予後に悪影響を与えることはなかったが、一部で報告されているように予後を良くするという証拠も得られなかった」と結論付けていた。