N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチドNT-proBNP)の血中濃度を測定することで、心不全時の左室収縮機能不全LVSD)を感度・陰性的中率100%で除外できることが報告された。一般臨床医が超音波心エコー検査の要不要を判断するマーカーとして有用と見られる。9月4日のポスターセッションで、デンマークFrederiksberg 大病院のJens Rosenberg氏が発表した。

 心不全などによって心筋細胞に障害が起きると、NT-proBNPが血中に現れ、病気の進行と共に血中濃度が高まることが知られている。欧州心臓学会議(ESC)は2005年、心不全に関するガイドラインに「NT-proBNPとこれに関連するペプチドは心不全の診断を助ける」と記載している。

 Rosenberg氏らは、一般臨床医がLVSDを除外するための検査として、NT-proBNP濃度測定が有効かどうかを評価した。欧州では、2002年にNT-proBNP検査装置が発売されている。そこで、発売前と発売後に、一般臨床医から心エコー検査が依頼された患者を対象とした。

 NT-proBNP検査のカットオフ値は125ng/L(検査機メーカーの推奨値)に設定。LVSDは左室駆出率が40%以下と定義した。
 
 検査装置の発売前に心不全が疑われて紹介された患者群(G2)のなかで、心エコー検査によりLVSDと診断されたのは9%のみ。エコー検査と同じ日にNT-proBNPを測定したところ、陽性となった患者は全体の57%だった。

 次に、検査装置発売後、NT-proBNPの測定を受け、それから3カ月以内に心エコー検査の依頼があった517人(G1)について分析した。NT-proBNP陽性率は87%、LVSDと診断された患者は21%だった。一般臨床医は、NT-proBNP検査の結果を基に心エコー検査を依頼するかどうかを決めるよう指示されていたわけではないが、検査結果を判断の参考にすることは可能だった。

 このグループでLVSDと診断された患者のNT-proBNP最低値は127ng/Lだった。これは、NT-proBNPを指標とした場合、LVSDがあるのに心エコー検査の依頼が行われなかった患者はいなかったことを意味する。

 診断の感度と陰性的中率はともに100%だった。特異性は16.9%、陽性的中率は24.1%となった。G2では感度97.0%、陰性的中率99.4%、特異性46.1%、陽性的中率15.1%だった。

 G1のLVSD有病率が高かったことは、NT-proBNPを参照する診断戦略が有効であることを示す。さらに、感度100%という結果は、NT-proBNPの測定が一般臨床医レベルでLVSDを除外するための検査として有用であることを確認した。NT-proBNP検査を行えば、不要な心エコー検査を回避できる。

 コスト面では、心エコー検査が150ユーロ、NT-proBNP検査が22.50ユーロで、一般臨床医がNT-proBNP検査を導入すると、患者1人当たりの診断費用を21ユーロ減らせると推算された。

 著者らは、LVSD除外のための検査としてNT-proBNP測定を導入すれば、発症から診断・治療までの時間を短縮でき、患者の生存と予後を改善できるとしている。

 発表の原題は「Evaluation of NT-proBNP-aided diagnostic strategy in chronic heart failure in general practice: Application of the European Society of Cardiology (ESC) chronic heart failure guidelines」。

※日本では、心不全の一般的な検査法として、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)検査が臨床の場で用いられている。