「側副血管の成長促進を目的としてサイトカイン放出ステントを用いた研究は初」と語るアムステルダム大のGrundmann氏

 冠動脈狭窄または閉塞患者において、細い側副血管の成長を促して天然のバイパスを育てることができれば、心臓への血液供給量を増やすことが可能だ。オランダ・アムステルダム大のSebastian Grundmann氏らは、トランスフォーミング成長因子βTGFβ1溶出ステントをウサギに埋め込み、細い血管の成長が促進されることを確認した。

 Grundmann氏は、TGFβ1ステント留置部位より下流のTGF濃度が上昇したこと、ベアステントを留置した場合に比べ、7日後の側副血管の血流コンダクタンスが約2倍になったことを、9月3日の一般口演セッション「血管新生の手法」で報告した。側副血管の成長促進を目的としてサイトカイン放出ステントを用いた研究はこれが初めてという。著者らは現在、ブタ冠疾患モデルを使って、サイトカイン溶出ステントの副作用と、冠循環に対する効果を調べている。

 サイトカインや成長因子を用いて、側副血管の成長を促進する動脈新生は、血管閉塞性疾患患者に対する有望な治療戦略と考えられている。動脈新生を促進するサイトカインも複数見付かっている。動脈新生を誘導するのであれば、動脈内にカテーテルを留置し、継続的に長期間、成長因子を注入する方法が最も有効だろうが、臨床的には現実的なアイデアとはいえない。ボーラス投与の効果を調べた臨床試験が行われたが、有効性は示せなかった。

 そこでGrundmann氏らは、臨床適用が可能な、成長因子送達法の開発が不可欠だとして、薬剤溶出ステントの応用によって下流の動脈新生を促進する手法を考えた。オランダMedtronic社の協力を得て、TGFβ1をポリマー(D、L-ラクチド)に混合、15mmのコバルト・クロム合金製冠動脈ステントに塗布して、TGF溶出ステントを作製した。in vitroで測定したところ、ディップコーティングにより約500μgのTGFを塗布したステントから、7日間で約2.5μgのTGFが溶出されたという。

 そこで、45匹のウサギを15匹ずつ3群に分け、外腸骨動脈に、それぞれ、ベアステント、ポリマーのみコートしたステント、TGF溶出ステントを留置。次に、下流の大腿動脈を結紮し、平行して走る側副血管の成長を比較した。その結果、ステント留置後、全身性のTGFレベルには変化なし。24時間後、ステントより下流の血漿TGF濃度はTGFステント群で有意に上昇していた。

 7日後、側副血管の潅流測定を行ったところ、処置された後肢の血流速度と血圧から算出された血管コンダクタンスは、TGFステント群で有意に高かった。ベアステント群は47.8 mL/min/100mmHg、ポリマーコートステント群は同44.1、TGFステント群は91.3、P=0.004)だった。後肢の側副血管の免疫組織学的分析は、TGFステント群で血管平滑筋細胞の増殖活性が有意に高いことを示した(それぞれ18.9%、18.4%、27.4%、P=0.039)。7日目の時点でステント内新生内膜面積には有意差はなかった(それぞれ0.34m2、0.32 m2、0.32 m2)。ステント留置後の側副血管の数には有意差はなかった。血管数は増えずに血流量が増えたことになる。

 口頭発表の原題は「First report of an endovascular stent for the delivery of an arteriogenic growth factor」。