わが国における市中肺炎(CAP)と医療ケア関連肺炎(HCAP)の臨床的特徴や原因微生物の比率、発症率を推定することを目的とした多施設前向き観察研究であるAPSG-Japanの中間解析の結果が初めて報告され、CAP/HCAP発症率が諸外国より高いこと、細菌では肺炎球菌、インフルエンザ菌が主な起炎菌であることなどが示された。9月7から11日にスペイン・バルセロナで開催された欧州呼吸器学会(ERS2013)で、長崎大学熱帯医学研究所臨床医学分野の森本浩之輔氏らの研究グループが報告した。

 本研究は、亀田総合病院(千葉県鴨川市)、近森病院(高知市)、江別市立病院(北海道江別市)、十善会病院(長崎市)の市中病院4施設(計1805床)において、2011年9月以降にCAPまたはHCAPと診断された成人患者を対象とした。臨床データと喀痰試料を集め、培養法と尿抗原検査で細菌を、multiplex PCR法で12種類のウイルスと6種類の細菌を同定した。

 対象全体および年齢別のCAP/HCAP発症率の推定には直接法および間接法を用いた。直接法では登録例数を施設周辺人口で割って発症率を推定し、間接法では登録例数を外来患者数で割り、施設管轄域の外来患者数を施設管轄域の人口で割った係数を掛けて発症率を推定した。

 本研究には2011年9月から2013年1月の期間に1855例が登録された。内訳はCAPが1256例(68%)、HCAPが599例(32%)だった。喀痰試料が得られたのは1691例で、PCR検査は781例で実施した。

 対象の男性比率は58%、年齢中央値は77歳、入院例が68%を占めた。HCAP群はCAP群に比べて高齢で、入院例、重症例が多かった。

 培養法と尿抗原検査によって同定された細菌は、インフルエンザ菌15.1%、肺炎球菌12.7%、黄色ブドウ球菌9.2%、モラクセラ菌5.7%、緑膿菌5.7%、コリネバクテリウム4.7%、クレブシエラ菌4.2%、大腸菌2.6%、レジオネラ菌0.8%だった。

 一方、multiplex PCR法で同定された細菌の内訳は、肺炎球菌が24.5%、インフルエンザ菌が19.5%、モラクセラ菌が10%、肺炎マイコプラズマが4.5%、肺炎クラミジアが1%だった。同定された肺炎球菌のうち52.0%はPCV13ワクチン血清型と適合した。

 また、multiplex PCR法により同定された呼吸器系ウイルスの内訳は、ヒトライノウイルスが10.24%、インフルエンザAウイルスが4.99%、RSウイルスが3.97%、ヒトメタニューモウイルスが2.82%などだった。

 CAP/HCAPの1000例・年当たりの発症率は直接法では13(CAP:8.4、HCAP:4.6)、間接法では6.2(CAP:4.2、HCAP:2)と推定された。発症率は加齢とともに上昇し、75歳以上の高齢者群では、それぞれ33.9(CAP:17.5、HCAP:16.4)、36.4(CAP:21.1、HCAP:15.2)となった。

 これらの結果について、森本氏は、「諸外国の報告と比較するとCAP/HCAPの発症率が高く、わが国の急速な高齢化を反映していると思われる」と考察した上で、「これまでわが国ではCAP/HCAPの全体像を示すきちんとした疫学的研究はほとんどなかった。APSG研究は2年目に入っており、2年間で4000例のデータ集積を目指す」と述べた。