米国Johns Hopkins UniversityのRobert A. Wise氏

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬である長時間作用型抗コリン薬(LAMA)チオトロピウムには、ドライパウダー吸入器(DPI)ソフトミスト定量吸入器(SMI)の2種類の吸入デバイスがある。両デバイスの安全性と有効性を直接比較したところ、SMIの死亡リスクはDPIに対して非劣性であることが証明された。これは無作為化比較試験TIOSPIRの結果として示されたもので、米国Johns Hopkins UniversityのRobert A. Wise氏が研究グループを代表して、9月7日から11日までスペイン・バルセロナで開催されている欧州呼吸器学会(ERS2013)で報告した。

 チオトロピウムのDPIであるハンディへラーを用いた場合、1日1回18μgを吸入する。近年開発された同薬のSMIであるレスピマットは1日1回5μgの吸入で済み、普及しつつある。気管支拡張の有効性や薬物動態において、両デバイスは同等とされている。しかし、SMIの場合、特に不整脈を有していた患者で、死亡数がプラセボと比較して増加することがメタ解析で報告されており、またオランダの処方データベースを用いた検討でもSMIはDPIに比べ死亡が増えることが示されている。

 今回の無作為化比較試験TIOSPIRではダブルダミー法を用い、死亡率については非劣性、初回増悪までの期間については優越性で比較した。対象を、SMI 2.5μg群、同5μg群、DPI 18μg群の3群に無作為に割り付けた(いずれの群も1日1回投与)。試験開始時、6週後、12週後、それ以降は12週ごとに評価し、2〜3年間追跡した。また、試験終了後30日間をフォローアップ期間とした。試験の終了は、event driven方式により約1266例の死亡が報告された時点とした。

 主な登録基準は、40歳以上の男女、10パック・年以上の喫煙歴、COPDとの診断、1秒率(=1秒量[FEV1]÷努力性肺活量×100)が70%以下、%1秒量(=FEV1実測値÷FEV1予測値×100)が 70%以下など。また、これまでの試験と異なり、安定した心血管疾患の既往者が含まれており、抗コリン薬以外の治療薬の併用も認められた。一方、主な除外基準は、COPD以外の肺疾患、増悪から4週間以内、心筋梗塞発症から6カ月以内、クラスIII・IVの心不全で入院、不安定な不整脈発症、がん治療施行から5年以内、薬物・アルコール乱用から1年以内、1日12時間以上の酸素療法施行などだった。

 登録患者2万313例のうち、1万7183例が無作為に割り付けられたが、実際に治療を受けたのは1万7135例。そのうち19例で記録が得られず、最終的に検討対象となったのは、SMI 2.5μg群が5724例、同5μg群が5705例、DPI 18μg群が5687例だった。

 患者背景に関しては、男女比率、年齢、%1秒量、不整脈の既往歴、併用薬などは3群で同等だった。試験期間中に3917例(23%)で薬剤投与を継続できなかったが、試験薬中止率に群間差はなかった。また、治療期間の中央値は835日で、状態が確認できたのは1万7088例(99.7%)、死亡は1302例(7.6%)だった。

 結果を見ると、総死亡率はSMI 2.5μg群が3.3/100人・年、同5μg群が3.2/100人・年、DPI 18μg群が3.4/100人・年と群間差はなかった。DPI 18μg群に対する総死亡のハザード比は、SMI 2.5μg群が1.00(95%信頼区間[CI]:0.87-1.14)、同5μg群が0.96(95%CI:0.84-1.09)だった。非劣性マージンの1.25を下回っていたので、両群ともにDPI 18μg群に対する非劣性が証明された。また、不整脈の既往のある患者においては、DPI 18μg群に対する総死亡のハザード比は、SMI 2.5μg群が1.02(95%CI:0.74-1.39)、同5μg群が0.81(95%CI:0.58-1.12)だった。

 薬剤投与例(on treatment)におけるCOPD増悪の累積発症率は、SMI 2.5μg群が49.4%(0.59/患者・年)、同5μg群が47.9%(0.59/患者・年)、DPI 18μg群が48.9%(0.59/患者・年)。重症の増悪に限っても、それぞれ15.2%(0.12/患者・年)、14.5%(0.12/患者・年)、14.3%(0.11/患者・年)で、ともに群間差は認められなかった。

 また、サブスタディとして、1370例でFEV1が測定され、24〜120週の平均値で比較した。その結果、DPI 18μg群に対するFEV1トラフ値の差は、SMI 2.5μg群が−37mL(95%CI:−65〜−9)、同5μg群が−10mL(同:−38〜18)だった。非劣性マージンの下限は−50mLであったので、SMI 5μg群では非劣性が証明された。

 以上からWise氏は、「チオトロピウムのSMIは2.5μg、5μgとも、DPI 18μgと比べ、安全性と増悪に対する有効性が同等だった。FEV1トラフ値に対する効果では、SMI 5μgでDPI 18μgに対する非劣性が示された」とまとめた。

 また、上記のオランダの処方データベースを用いた検討を行った同国Erasmus Medical CenterのKatia Verhamme氏は、「TIOSPIRは1万7000例余りを対象とした大規模臨床試験であり、試験期間も2〜3年と決して短くない。我々が検討に用いたコホートに同試験の除外基準を適用しても、死亡例の50%以上が除外されずに残ったため、信頼性の高い検討と考えられる」とコメントした。