ドイツBoehringer Ingelheim Pharma社のMatthias Duechs氏

 長時間作用型抗コリン薬チオトロピウムホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬roflumilastが、COPD急性増悪時炎症抑制に有用である可能性が報告された。ドイツBoehringer Ingelheim Pharma社のMatthias Duechs氏らがモデルマウスでの検討を基に、9月7日からスペインのバルセロナで開催されている欧州呼吸器学会(ERS2013)で発表した。

 COPDの急性増悪は予定外受診や入院、死亡の要因であり、そうした急性増悪の40〜60%はウイルス感染によるとされる。実際に、インフルエンザの流行シーズンにはCOPDの急性増悪による入院や死亡が増えるとの報告がある。

 今回、Duechs氏らは、COPD急性増悪に対する有効な治療法を検証するために、雌性BALB/cマウスを1〜5日目および8〜12日目の計10日間にわたりタバコ煙に曝露し、さらに8日目にA型インフルエンザウイルス(H1NI)を感染させ、COPD急性増悪のモデルマウスを作製した。これらのマウスを、何も治療を行わない対照群、吸入ステロイド薬フルチカゾン0.3mg/kg投与群と同0.5mg/kg投与群、roflumilast 0.2mg/kg投与群と同1mg/kg投与群、チオトロピウム0.1 mg/mL投与群と同0.3mg/mL群に割り付けた(各群8匹)。投薬については、1〜5日目および8〜12日目に行い、12日目に解析した。

 気道抵抗の指標とされるPenHは、フルチカゾン投与群では上昇し、特に0.5mg/kg群では対照群に対し有意に高かった(P<0.001)。一方、roflumilastあるいはチオトロピウムを投与した群では用量を問わず、有意な変化を認めなかった。

 好中球については、フルチカゾン群では減少せず、特に0.3mg/kg群では有意に増加した(P<0.01)。それに対し、roflumilast群とチオトロピウム群ではいずれの用量でも減少し、なかでもroflumilast 1mg /kg群は23%、チオトロピウム0.1mg/mL群は32%、同0.3mg/mL群は30%、それぞれ有意に減った(順にP<0.05、P<0.01、P<0.01)。また、マクロファージについては、フルチカゾン群では有意な減少は認められなかったが、roflumilast群、チオトロピウム群ではいずれも減少し、そのうちroflumilast 1mg/kg群は30%、チオトロピウム0.3mg/mL群は40%、それぞれ有意に減った(順にP<0.05、P<0.01)。

 前炎症性サイトカインの変化を見ると、フルチカゾン投与群はいずれの用量でもIFN-γ、IL-1β、KC、TNF-α、IL-6、IL-10が投与前に比べ増え、さらに、KC、TNF-α、IL-6、IL-10はいずれでも有意な増加だった(すべてP<0.001)。一方、roflumilast群とチオトロピウム群ではどちらの用量でも、いずれの前炎症性サイトカインも減少あるいはわずかな増加にとどまっていた。そのうち有意な減少が認められたのは、roflumilast 0.2mg/kg群はIL-6(P<0.05)、同1mg/kg群はIFN-γ、KC、IL-6(順にP<0.01、P<0.01、P<0.001)、チオトロピウム0.1mg/mL群はIL-6(P<0.001)、同0.3mg/mL群はIFN-α、IL-6、IL-10(順にP<0.05、P<0.001、P<0.01)だった。

 肺組織におけるインフルエンザウイルスのRNA量を解析したところ、フルチカゾン群では著明に上昇していたが、roflumilast群とチオトロピウム群では変化を認めなかった。

 今回の結果はモデル動物での検討と前置きした上でDuechs氏は、「フルチカゾンは炎症反応をむしろ亢進させ、肺機能を低下させた。また、ウイルス量を著明に増加させ、健康状態を悪化させた。その一方、roflumilastとチオトロピウムは、好中球やマクロファージだけでなく前炎症性サイトカインも抑制した」とまとめた。