昭和大学糖尿病・代謝・内分泌内科の友安雅子氏

 GLP-1受容体作動薬は、マクロファージの泡沫細胞形成や血管平滑筋細胞(VSMCs)の遊走・増殖を抑制することで動脈硬化の進展抑制作用を持つ可能性があることが示された。成果は、9月23〜27日にバルセロナで開催された欧州糖尿病学会(EASD2013)で、昭和大学糖尿病・代謝・内分泌内科の友安雅子氏らによって報告された。

 友安氏らはApoE欠損マウスにおいて、GLP-1およびGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)の投与により、大動脈壁への単球やマクロファージの浸潤、また動脈硬化性病変の進展が抑制されることを報告している。今回、これらのインクレチン関連薬が動脈硬化の進展を抑制する機序について、より詳細な検討を行った。

 まず、通常食で飼育した17週齢の雄ApoE欠損マウスの食餌を動脈硬化食に変更した上で、生理食塩水またはリラグルチド(107 nmol/kg/日)を4週間投与した。

 その結果、リラグルチドの投与によって大動脈における動脈硬化性病変の面積は有意に減少し、マクロファージの集積および泡沫細胞形成も有意に抑制された(いずれもP<0.0001)。

 次に、動脈硬化進展の過程で重要な役割を担っているとされるVSMCs表現型の変化、およびVSMCsの遊走と増殖に対する同薬剤の作用を検討した。

 GLP-1およびGIPによって、VSMCs増殖型に発現する非筋肉由来ミオシンH鎖(SMemb)の陽性領域は有意に減少したが(それぞれP<0.01、P<0.05)、VSMCs収縮型に発現するSM2の陽性領域に変化は見られなかった。

 血小板由来成長因子(PDGF)-BBによるVSMCsの増殖は、GLP-1(0.1nM、1nM:ともにP<0.01)、GIP(0.1nM:P<0.01、1nM:P<0.05)によって有意に抑制された。しかしその効果は、それぞれのアンタゴニストであるExendin(9-39)、およびPro3(GIP)によって減弱した。GLP-1受容体作動薬のリラグルチド(100nm/L)、およびExendin-4(100nmol/L)でも同様に、PDGF-BBによるVSMCs増殖の有意な抑制が認められた(いずれもP<0.05)。

 ボイデンチャンバー法によって評価したVSMCs遊走も、GLP-1(1nM、P<0.01)およびGIP(1nM、P<0.05)によって有意に抑制された。

 同氏らはさらに、健常ボランティアから得たヒトマクロファージを用いた検討から、GLP-1(10nM、P<0.05)、GIP(5nM、P<0.005)、Exendin-4(100nM:P<0.005、150nM:P<0.05)が、酸化LDLによる泡沫細胞形成を有意に抑制することを示した。

 また、GLP-1、GIP、Exendin-4はCD36とACAT1の発現を抑制したが、ABCA1の発現は逆に増加した。これらは泡沫細胞形成の過程で重要な役割を担う分子であり、CD36、ACAT1の活性抑制とABCA1の活性化が、インクレチン関連薬による泡沫細胞形成の抑制に寄与していると考えられた。

 リアルタイムPCRでGLP-1/GIP受容体のmRNA発現を検討したところ、GLP-1受容体はヒトVSMCs、ヒト単球と比較して、単球由来マクロファージではあまり発現していなかった。一方、GIP受容体は、VSMCs、マクロファージでの発現は低く、ヒト単球において高レベルで発現していた。

 ヒト単球細胞系U937では、GIP(5nM、10nM)、Exendin-4(1nM、5nM)による有意なcAMP産生が認められたことから、単球がGIP受容体、GLP-1受容体を有しており、GIPおよびGLP-1はこれらの受容体を介して、ヒト単球における泡沫細胞形成抑制作用を発揮すると考えられた。

 これらの基礎的検討から友安氏は、「インクレチン関連薬による治療は、動脈硬化性疾患の新たな治療として期待される」と結論した。