デンマーク・Novo Nordisk社のDorte B Steensgaard氏

 インスリン デグルデク(以下、デグルデク)投与時に、皮下で形成されるマルチヘキサマー(六量体の集合体)を構成する個々のインスリンの立体構造は、分子的な修飾をしていないヒトインスリンのそれと非常に近いことが、円偏光二色性スペクトルやラマン分光法など複数の構造解析法から確認された。9月23〜27日にバルセロナで開催されていた欧州糖尿病学会(EASD2013)で、デンマーク・Novo Nordisk社のDorte B Steensgaard氏らが報告した。

 インスリンはαへリックス構造をとる2つのポリペプチド鎖からなるが、非生理的な条件下ではβシート構造を主体とする針状のアミロイド繊維を形成し、正常な機能を持たなくなることが知られている。

 デグルデクは、製剤中で六量体が2つ集合したダイヘキサマーとして安定的に存在する。投与後、皮下でマルチヘキサマーを形成して注射部位にとどまり、亜鉛の放出に伴って、徐々にモノマー(単量体、デグルデク1分子)に解離しながら血中に移行することで、長時間持続する作用を示す。

 Steensgaard氏らは、デグルデクのモノマーおよびマルチヘキサマーが、ヒトインスリンと同様のαへリックス構造を有し、アミロイド繊維にみられるβシート構造をとらないことを確認している。しかし、マルチヘキサマーの透過型電子顕微鏡(TEM)像ではアミロイド繊維と類似した像が得られることから、今回、様々な構造解析法を駆使してデグルデクの立体構造を明らかにした。

 まず円偏光二色性(CD)スペクトルから、デグルデクのモノマーとマルチヘキサマーは、ヒトインスリンと同様に、典型的なαへリックス構造であることを示す208nmおよび222nmでの負のピークを有するスペクトルが得られた。一方、ヒトインスリンをpH2.7、摂氏70度の条件で数時間撹拌して作成したヒトインスリン繊維は、アミロイド繊維のβシート構造の指標となる217nmに負のピークがあるスペクトルを示した。

 ラマン分光法で得られたスペクトルから、デグルデクのモノマーとマルチヘキサマーは、スペクトルのパターンと、Amide A、Amide I、Amide IIIバンドの位置が、ヒトインスリンと同であることが示された。これに対してインスリン繊維は、1672cm-1に強いピークが出現したほか、Amide Aが3280cm-1に移動するアミロイドβ構造に特有のスペクトルを示した。なお、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)でも同様な結果が得られたという。

 小角X線散乱(SAXS)による構造解析から、マルチヘキサマーは個々のヘキサマーが細長く連なった構造(elongated structure)をしていること、またブラッグピークから34.8オングストローム間隔で繰り返される構造をしていることが示された。Steensgaard氏によれば、この間隔はヒトインスリン結晶に近いものだという。

 これらの検討からSteensgaard氏は、「デグルデクのマルチヘキサマーではヒトインスリンの立体構造が維持されており、分子的な修飾をしていないヒトインスリンのそれと非常に近いことが示された」と結論した。