オーストラリアQueensland Institute of Medical ResearchのSanjoy K. Paul氏

 血糖コントロール不良の2型糖尿病患者において、HbA1c値7%以下を目標とする治療の強化が6カ月遅れると、心血管イベント(CVE)の発症リスクが2割以上高まることが報告された。オーストラリアQueensland Institute of Medical ResearchのSanjoy K. Paul氏らが、英国のUK Clinical Practice Research Databaseの患者データベースを用いて解析した結果を、9月23〜27日にバルセロナで開催された欧州糖尿病学会(EASD2013)で発表した。

 Paul氏らは今回、1990年1月〜2012年12月に2型糖尿病と診断され、18歳以上で糖尿病治療の内容や患者背景、CVEの発生状況が詳細に把握できた10万5477例を解析対象とした。CVEは、心筋梗塞(MI)、脳卒中、心不全、その他の冠動脈疾患、虚血性心疾患、冠動脈バイパス術の施行とした。

 ここでは、2種類以上の経口血糖降下薬の併用(OAD2)、あるいは1種類以上の経口血糖降下薬とインスリン療法の併用(OAD+INS)を治療強化と定義した。

 2型糖尿病の診断日以降をフォローアップ期間とし、診断日から治療強化開始までの日数、およびフォローアップ期間中の最初のCVEまでの日数を算出した。また治療強化開始の遅延の影響を評価するため、強化開始日から最初のCVEまでの日数も算出した。

 血糖コントロールの状況は、フォローアップ期間の6カ月ごとのHbA1c測定値を基に、HbA1c値7%以上が長期に継続している場合を血糖コントロール不良と定義し、HbA1c値7%以上が12カ月以上継続した患者、および24カ月以上継続した患者をそれぞれ抽出した。

 糖尿病診断時の患者背景は、平均年齢61歳(男性56%)、喫煙率63%(過去の喫煙も含む)、HbA1c平均値8.1%(中央値7.4%)だった。また11.3%(1万1955例)が糖尿病診断前のCVE既往があり、そのうちの14%(1721例)が糖尿病診断2年後以降に1回以上のCVEを経験していた。

 フォローアップ期間中(中央値5.3年)にCVEが7166例(6.8%)に発生した。内訳はMIが2445例(2.3%)、脳卒中が2267例(2.2%)、心不全が3193例(3.0%)などだった。

 一方、フォローアップ期間中に、4万6368例(44%)の患者にOAD2が開始され、開始までの期間の中央値は22カ月だった。OAD+INSを開始した患者は1万1442例(11%)で、開始までの期間の中央値は44カ月だった。

 糖尿病診断後にHbA1c値7%以上が12カ月続いていた患者は29%で、そのうち34%は治療の強化が開始されていなかった。HbA1c値7%以上が24カ月続いていた患者も22%に及び、うち25%は治療の強化が開始されていなかった。

 以上の結果を基に、血糖コントロール不良で治療強化の開始が6カ月遅れた場合のCVEリスクを、2型糖尿病診断時の年齢、性別、喫煙歴、心保護薬の使用、診断前のCVEを共変量とし、多変量Cox回帰モデルで解析した。

 その結果、すべての患者について、治療強化が6カ月遅延することによってもたらされるCVE発生のハザード比は1.25(95%信頼区間[CI]:1.13‐1.39、以下同)、MIが1.38(1.16‐1.62)、心不全が1.28(1.10‐1.48)、脳卒中が1.07(0.89‐1.29)だった。

 なお、その中で2型糖尿病診断前にCVE既往歴のない患者でのハザード比は、CVEが1.20(1.07‐1.35)、MIが1.21(1.00‐1.47)、心不全が1.28(1.07‐1.52)、脳卒中が1.07(0.87‐1.31)、またCVEの既往を有する2型糖尿病患者では、CVEが1.42(1.15‐1.75)、MIが1.91(1.40‐2.60)、心不全が1.27(0.95‐1.70)、脳卒中が1.08(0.73‐1.61)となった。

 Paul氏はこれらの結果から、「血糖コントロールが不良にもかかわらず、治療が強化されずに長く放置されている患者が一定数存在する。しかも、わずか6カ月の治療強化の開始遅延で、MIをはじめとするCVEの発生リスクが著明に高まった」と強調した。