カナダAlberta大学のDean T. Eurich氏

 2型糖尿病(2TDM)で心不全のある患者に対するシタグリプチンの投与は、総入院・死亡率や、心血管疾患による入院・死亡率の増大、または減少には影響しないことが示された。これは、カナダAlberta大学のDaniala L.Weir氏らが、約1万2000人について行った、地域住民対象の集団研究の結果明らかにしたもの。9月27日までバルセロナで開催されていた欧州糖尿病学会(EASD2013)で、共同研究者のDean T. Eurich氏が発表した。

 シタグリプチンはインクレチン関連薬の一種で、心血管系や心不全などに対し、多面効果の可能性が考えられている。Weir氏らは、米国50州の患者を含む医療保険請求データと臨床検査データを用い、2型糖尿病で心不全を発症した20歳以上の1万1964人について、後ろ向きに調査を行った。追跡期間は、2004年初から2010年末まで、または患者の死亡や保険プランからの脱会までだった。

 主要評価項目は入院または死亡、副次評価項目は、心血管疾患による入院または死亡、心血管疾患による入院、総死亡だった。時変コックス比例ハザードモデルにより、シタグリプチン、メトホルミン、SU薬のそれぞれ服用とアウトカムとの関連を分析した。

 患者の背景は、ベースライン時の平均年齢は、54.9歳、男性の割合は約60%だった。

 追跡期間中に死亡または入院したのは6702人(56%)で、うち入院が6595人(55%)、死亡が653人(5%)だった。心血管疾患による入院または死亡は3940人(33%)で、うち入院が3573人(30%)だった。

 補正前の入院・死亡率は、シタグリプチン非服用群では9.2%だったのに対し、服用群では7.8%と有意に低率だった(オッズ比:0.84、95%信頼区間[CI]:0.73‐0.97)。しかし、被験者の居住地域や臨床・検査データ、処方記録などによる補正後には、両群の入院・死亡率に有意差はなかった(オッズ比:0.89、95%CI:0.77‐1.03)。

 補正前の心血管疾患による入院・死亡率もまた、シタグリプチン非服用群で9.1%、服用群で8.3%と同等だった(オッズ比:0.90、95%CI:0.74‐1.09)。補正後の同率についてもまた、両群で同等だった(オッズ比:0.99、95%CI:0.81‐1.20)。

 なお、メトホルミン服用・非服用群、SU薬服用・非服用群では、評価項目発生率にいずれも有意差はなかった。

 Eurich氏は今回の試験結果について、「これまでの動物を対象にした試験結果などから、2型糖尿病で心不全のあるハイリスク群に対し、シタグリプチンが心血管リスクを減少すると予想していた」とした。既に発表されているメタ解析でもまた、シタグリプチン服用により重度心血管有害事象のリスクが30〜60%減少するという結果が報告されている。「その点からは、今回の試験結果は期待外れだったが、一方でシタグリプチンが同リスクを増大しない点が確認されたことは朗報だ」とコメントした。