オーストリア・Medical University of GrazのThomas R. Pieber氏

 インスリン療法を行っている患者では、糖尿病の病型の違いやインスリンの投与方法の違いにかかわらず、空腹時血糖FPG)値の日間の個体内変動が大きい方が低血糖のリスクは高いことが明らかになった。持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)の7つの第3相試験をメタ解析した結果で、9月23日からバルセロナで開催されている欧州糖尿病学会(EASD2013)で、オーストリア・Medical University of GrazのThomas R. Pieber氏らが発表した。

 インスリン療法では、目標FPG値に到達するために基礎インスリンの投与量を調整する。だが基礎インスリンの薬物動態プロファイルが投与ごとに予測できないことにより、FPG値の日間の個体内変動が大きくなる場合は指標にしづらく、低血糖の発現リスクを増大させる可能性がある。そこでPieber氏らはデグルデクの臨床試験のデータを基に、一人ひとりの糖尿病患者におけるFPG値の変動と低血糖の発現リスクとの関連を検討した。

 解析対象となった7つの試験は、いずれもインスリン グラルギン(以下、グラルギン)を対照とするデグルデクの第3相試験で、無作為割り付け、非盲検、treat-to-target法(目標FPG値を達成するように、あらかじめ決められたアルゴリズムに従ってインスリン投与量を調整する方式)で実施された。

 7つの試験のうち2つは1型糖尿病患者を対象とした試験だった。残り5つは2型糖尿病を対象とした試験で、1試験では強化インスリン療法下でデグルデクを1日1回投与した。他の4試験のうち3試験ではインスリン治療歴のない患者に経口血糖降下薬との併用下でデグルデクを1日1回投与(BOT導入)し、1試験ではインスリン治療を実施している患者に経口血糖降下薬との併用下でデグルデクを1日1回投与(BOT切り替え)した。

 FPG値の日間の個体内変動の指標として、試験の最終週(26週または52週)における連続3日間のFPG値(自己測定による)から、その変動係数(CV%)を算出した。このCV%について、「低血糖」の年間発現頻度で患者を並べたときに多い方から25%(25パーセンタイル)に入った患者群(上位25%群)と、それ未満だった患者群(下位75%群)で比較した。なお「低血糖」とは、血糖値3.1mmol/L未満および重大な低血糖(第三者による処置が必要な低血糖)と定義した。

 その結果、下位75%群に対する上位25%群のCV%の推定比(上位25%群/下位75%群)は、1型糖尿病患者ではデグルデク群で1.33(95%信頼区間[CI]:1.20‐1.46)、グラルギン群で1.25(95%CI:1.07‐1.42)、2型糖尿病患者全体ではデグルデク群で1.50(95%CI:1.43‐1.58)、グラルギン群で1.46(95%CI:1.36‐1.56)であり、いずれも上位25%群の方がFPG値の日間の個体内変動は有意に大きかった(全てP<0.05)。

 2型糖尿病患者をインスリンの投与方法別で検討しても、BOT切り替え患者でデグルデク群1.33(95%CI:1.25‐1.41)、グラルギン群1.46(95%CI:1.34‐1.57)、BOT導入患者でデグルデク群1.33(95%CI:1.24‐1.42)、グラルギン群1.49(95%CI:1.35‐1.63)、強化インスリン療法患者でデグルデク群1.65(95%CI:1.50‐1.79)、グラルギン群1.65(95%CI:1.40‐1.91)であり、どの投与方法でも上位25%群の方がFPG値の日間の個体内変動は有意に大きかった(全てP<0.05)。

 これらの結果からPieber氏は、「強化インスリン療法でもBOT療法でも、FPGの日間の個体内変動が大きい患者では低血糖の発現リスクが高まる可能性がある。従ってインスリン治療を行っている糖尿病患者では、低血糖回避のためFPGの日間の個体内変動を少なくするということにもっと目を向けるべきだ」との見解を示した。