東京女子医大糖尿病センターの田中祐希氏

 日本における糖尿病前症の患者への予防介入に最適なカットオフ値は空腹時血糖FPG)値は100mg/dL、HbA1c値は6%であることが日本で実施された5年間の前向きコホート研究の結果から示された。東京女子医大糖尿病センターの田中祐希氏らが、9月23日からバルセロナで開催されている欧州糖尿病学会(EASD2013)で発表した。

 近年、日本人はFPG値が100mg/dL以上になると糖尿病発症のリスクが高まることが報告されている。だが、これまで糖尿病発症の前段階である糖尿病前症については、明確な基準値は定められていなかった。そこで田中氏らは糖尿病発症を推測するための、日本人におけるFPG値とHbA1c値のカットオフ値を決める目的で研究を実施した。

 対象は2006年2月〜2007年1月に健康診断を目的に埼玉県済生会栗橋病院を受診した、FPG値が126mg/dL未満の3826人(平均3.2±1.9年追跡)とHbA1c値が6.5%未満の2772人(平均4.0±1.4年追跡)。同期間中に一度でもFPG値が126mg/dL以上、もしくはHbA1cの値が6.5%以上となった場合は糖尿病を発症したと判断した。

 データはCox比例ハザードモデルで、糖尿病の発症リスクを評価。その後、ROC解析を用いて、糖尿病前症を見分けるFPG値とHbA1c値の最適なカットオフ値を求めた。

 Cox比例ハザードモデルによる糖尿病とFPGの相対リスクは、FPG値により3群(<100、100〜109、110〜125)に分け、<100群を基準にハザード比を求めたところ、単変量解析ではハザード比が100〜109群で7.9%(95%信頼区間[CI]:4.3‐14.6)、110〜125群では65.8%(95%CI:38.4‐112.8)となった。また、年齢、性別、BMI、拡張期血圧の因子を含めた多変量解析ではハザード比が100〜109群では7.3%(95%CI:3.9‐13.7)、110〜125群では60.1%(95%CI:34.0‐106.2)となり、FPG値が上がるにつれハザード値が上昇した。

 一方、Cox比例ハザードモデルによる糖尿病とHbA1cの相対リスクは、HbA1c値により4群(<5.6、5.6〜5.7、5.8〜5.9、6.0〜6.4)に分け、<5.6群を基準にハザード比を求めたところ、単変量解析ではハザード比が5.6〜5.7群で0.9%(95%CI:0.1‐5.0)、5.8〜5.9群では2.2%(95%CI:0.5‐10.2)、6.0〜6.4群では61.7%(95%CI:22.3‐170.2)となった。また、年齢、性別、BMI、拡張期血圧の因子を含めた多変量解析ではハザード比が5.6〜5.7群では0.9%(95%CI:0.1‐5.3)、5.8〜5.9群では2.6%(95%CI:0.5‐11.8)、6.0〜6.4群では75.9%(95%CI:26.4‐218.3)となり、HbA1c値が6%以上になるとハザード値が大幅に上昇した。

 その後、ROC解析を用いてFPGとHbA1cの糖尿病前症を見分けるために適切なカットオフ値を求めたところ、FPGは100mg/dL、HbA1cは6.0%と推定された。

 田中氏は今後の展望として、境界型糖尿病の判断に適したFPGとHbA1cのカットオフ値を定めるには、「糖尿病網膜症などのハードエンドポイントとの関係から、改めて調査する必要があるだろう」と述べた。

 なお、同研究では糖尿病前症は経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)によりFPGが110〜125mg/dL、75gグルコースによるOGTTが140〜199mg/dLと耐糖能異常が現れている状態と定義している。