ドイツResearch Institute DiabetesのNorbert Hermanns氏

 糖尿病の心理社会的な側面に焦点を当てた大規模な調査研究「DAWN(Diabetes Attitudes, Wishes and Needs)2」から、重度の低血糖の発現が糖尿病に関連する悩みを悪化させ、心理的健康度を低下させることが示された。9月23日からバルセロナで開催されている欧州糖尿病学会(EASD2013)で、ドイツResearch Institute DiabetesのNorbert Hermanns氏が報告した。

 重度の低血糖は、患者が適切な血糖コントロールを達成する上で障害となる。よりよい糖尿病ケア実現のために、糖尿病ケアの障壁や改善要因をあらゆる角度から検証したDAWN2 studyから今回、重度の低血糖について、その頻度や患者の心理的健康に与える影響、糖尿病教育の役割などが検討された。

 対象は、日本を含めた17カ国に居住する18歳以上の糖尿病患者。各国約500例(1型糖尿病80例、2型糖尿病420例)に、インターネット、電話あるいは対面での聞き取り調査を行った。この1年間に経験した重度の低血糖(第三者による処置を要する低血糖)の発生回数、糖尿病教育への参加の有無を尋ねたほか、「糖尿病問題領域質問表(PAID-5)」(スコアが高いと糖尿病に関連する悩みが大きい)を用いて患者の糖尿病に関連する悩み抱えているかを、また「WHO-5精神的健康状態表」(スコアが高い方が良好)を用いて心理的健康度を評価した。

 患者の平均年齢は57歳(1型糖尿病41歳、2型糖尿病59歳)で男女比はほぼ1対1、インスリン投与率は46.1%(1型糖尿病100%、2型糖尿病35.9%)だった。

 1型糖尿病(1368例)の54.0%、2型糖尿病(7228例)の28.9%、全体では33.0%が、過去12カ月以内に1回以上の重度の低血糖エピソードを経験していた。インスリン投与の有無別では、投与患者が42.3%、非投与患者が25.0%だった。患者・年当たりの発生頻度は全体で1.64回、1型糖尿病では2.7回、2型糖尿病では1.4回、インスリン投与患者では2.2回、非投与患者では1.2回だった。

 重度の低血糖の発生頻度は国によって大きな差が認められ(P<0.0001)、トルコで最も高く、日本で最も低かった。

 糖尿病教育と重度低血糖との関連をみると、1回以上重度の低血糖を経験していた患者では、糖尿病教育を受けたことがあるとの回答が、2型糖尿病では43%(オッズ比:1.43、95%信頼区間[CI]:1.25‐1.61)、1型糖尿病では67%多かった(オッズ比:1.67、95%CI:1.25‐2.22)。インスリン投与患者(オッズ比:1.37、95%CI:1.16‐1.64)、非投与患者(オッズ比:1.47、95%CI:1.25‐1.72)でも同様の傾向が認められた。

 Hermanns氏はこの結果から、重度の低血糖発生が糖尿病教育への参加の動機付けになる可能性を指摘した。ただし、今回の検討では、糖尿病教育を受けた時期と低血糖発生の前後関係は調査していない。そのため、教育を受けていない患者よりも教育を受けていた患者で低血糖発生頻度が高かった理由については、明らかではない。

 重度の低血糖を経験しなかった患者と比較して、経験した患者では、糖尿病に関連する悩みを抱えている割合が有意(P<0.0001)に悪化しており(PAID-5スコアの差:1型患者+10.2、2型患者+17.2)、心理的健康度も有意(P<0.0001)に低かった(WHO-5スコアの差:1型患者−4.4、2型患者−7.8)。インスリン投与の有無で層別した解析でも同様だった。

 Hermanns氏は、「糖尿病患者における重度の低血糖発生頻度は高く、予想したとおり1型糖尿病やインスリン投与患者では、より高頻度だった。今回の検討によって、重度の低血糖は患者の糖尿病に関連する悩みを悪化させ、心理的健康度を低下させることが分かった」と結論づけた。低血糖の発生頻度が国によって大きく異なっていた理由や糖尿病教育の役割については、今後さらに検討が必要としている。