英国University of SheffieldのElaine Y.K. Chow氏

 ACCORD試験では、2型糖尿病(DM)患者に対する厳格な血糖コントロールは死亡率を上昇させることが確認されたが、これらの結果の背景要因として低血糖との関連が指摘されている。そこで、グルコースクランプ法を用いて実験的な低血糖状態が血栓形成や炎症にどのような影響を与えるかを調べたところ、低血糖後の1週間は血栓形成や炎症が促進されることなどが示された。9月23日にバルセロナで開幕した欧州糖尿病学会(EASD2013)で、英国University of SheffieldのElaine Y.K. Chow氏らが発表した。

 対象は、2型DM患者10人(平均年齢:50±8歳、罹病期間:9.5年、HbA1c値:8.7%)。全員が、60分間の高インスリンクランプ法を2回実施し、血糖値は低血糖(2.5mol/L)、および正常血糖(6mol/L)に維持された。回復期には血糖は正常に戻され、その後は通常の糖尿病薬の服用を続けた。

 血栓形成、および炎症マーカーの測定は、ベースライン、クランプ終了時、終了1日後、および7日後とした。

 試験の結果、フィブリンネットワーク形成の指標である血栓の最大吸光度は、低血糖クランプ後に上昇(7日後で⊿0.04AU)した。これに対し、正常血糖クランプ後は低下した(7日後⊿−0.035AU)。低血糖クランプ後は、正常血糖クランプ後と比較して有意な上昇を示した(P<0.01)。

 また、フィブリン溶解力の指標である血餅溶解時間(50%溶解)は、低血糖クランプ後に延長し、正常血糖クランプ後は逆に短縮した(7日後で、それぞれ⊿64秒 対 ⊿−51秒、正常血糖クランプ後と比較してP=0.02)。

 一方、炎症マーカーであるフィブリノーゲンおよびhsCRPは、正常血糖クランプ後は変化がないか減少したのに対し、低血糖クランプ後は上昇し、7日後には正常血糖クランプ後に比較して有意な上昇を示した(7日後のhsCRP:0.80mg/L 対 −0.89mg/L、P<0.01)。

 本研究によって、2型DM患者では、低血糖後の最低でも1週間は、血栓形成を促進し潜在的な炎症を引き起こす可能性あることが示された。これに対し、正常血糖クランプ後は、血栓形成や炎症過程を抑える方向に働く可能性がある。これらの結果を踏まえChow氏は、「血糖コントロール強化療法は、低血糖による血栓形成や炎症によって、その効果が減弱されるのかもしれない。さらなる研究が必要だ」と語った。