スウェーデンOrebro University HospitalのJohan Jendle氏

 糖尿病のインスリン療法では、インスリン注射の煩雑さや低血糖に対する恐怖感などが健康関連QOL(HRQoL)に影響を及ぼすことが課題となっている。新しい超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデクは既存の持効型インスリン製剤であるインスリン グラルギンに比べ、HRQoLは良好であることが示された。10月5日までベルリンで開催されていた欧州糖尿病学会(EASD2012)で、スウェーデンOrebro University HospitalのJohan Jendle氏らが報告した。

 本検討は、事前に計画されたメタ解析として行われた。過去にインスリン治療歴のない経口血糖降下薬で治療中の2型糖尿病患者に、併用にて基礎インスリン治療を開始した際のHRQoLの評価が目的だった。そこで、このような2型糖尿病患者に対し実施された、デグルデクとグラルギンの有効性および安全性を比較した3つのオープンラベル無作為化臨床試験から得られた患者データを用いた。

 解析対象となった患者は、デグルデク群が1290例、グラルギン群が632例。経口血糖降下薬とともにデグルデクまたはグラルギンが1日1回投与され、投与期間は26週間または52週間だった。インスリン投与量は、両群ともに空腹時血糖90mg/dL(5mmol/L)未満を達成するように用量を調節していた。

 3つの試験において、両群の患者背景に差は見られなかった。いずれの試験においても、HbA1cを指標とした血糖コンロールについては、デグルデクはグラルギンに対し非劣性であることが示された。デグルデク群のグラルギン群に対するすべての低血糖の発現件数のERR(estimated rate ratio)は0.82〜0.86で、デグルデク群の方が少ない傾向を示していた。夜間低血糖のERRは0.62〜0.64で、2つの試験でデグルデク群は有意に少なく、残りの1つの試験は少ない傾向を示していた。さらに、1つの試験では、重大な低血糖もデグルデク群ではグラルギン群に比べ86%少なく、統計的に有意であるとの結果だった。

 HRQOLに関しては、さまざまな疾患領域で使用されているSF-36 v.2を用い、ベースラインと試験終了時の2回評価した。3つの臨床試験は国際共同試験として実施されていたが、SF-36 v.2は試験に参加したすべての国の言語に翻訳され、その妥当性が検証、確認された上で使用された。なお、質問票には患者自身が回答を記入し、現場の臨床試験の関係者はその内容が読めないようにしていた。

 SF-36 v.2は、身体的健康(Physical Component Summary:PCS)と精神的健康(Mental Component Summary:MCS)という大きく2つのコンポーネントからなる。さらに、それぞれ4つ、すなわち8つの下位尺度である、「身体機能」、「日常役割機能(身体)」、「体の痛み」、「全体的健康感」、「活力」、「社会生活機能」、「日常役割機能(精神)」、「心の健康」で構成される。

 HRQoL評価の変化量(試験終了時とベースラインの差)を見ると、PCS総スコアはデグルデク群の方がグラルギン群に比べて0.66大きく(95%信頼区間[95%CI]:0.04-1.28、P<0.05)、統計的に有意であった。下位尺度別に見ると、「体の痛み」は1.10大きく(95%CI:0.22-1.98、P<0.05)、統計的に有意であり、他の3つはデグルデク群の方が良好な傾向を示していた。

 一方、MCS総スコアについては、統計的に有意な差はないもののデグルデク群で良好な傾向であった。下位尺度別に評価すると、「活力」が0.81大きく(95%CI:0.01-1.59、P<0.05)、統計的に有意であり、残りの3つの尺度では、統計的に有意な差はなかったものの、いずれもグラルギンに比べてデグルデク群で良好な傾向であった。

 これらの結果からJendle氏は、「デグルデクの数ある臨床試験で示されているグラルギンとの最も大きな違いは、低血糖発現の少なさだった。HRQoLの評価で、デグルデク群はPCS総スコアをはじめ、すべての下位尺度でグラルギン群より良好であった背景には、やはり低血糖が少ないことが影響しているのではないか」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)