英国Oxford Centre for Diabetes Endocrinology and MetabolismのStephen CL Gough氏

 新規の超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデクは既存の持効型インスリン製剤であるインスリン グラルギンに比べ、2型糖尿病患者における低血糖夜間低血糖の発現件数が有意に少ないことが分かった。また、65歳以上の高齢者の夜間低血糖の発現を有意に減少させることや、インスリン投与量の調整が終わった後の維持期間(16週以降)ではより少なくなることも、メタ解析により明らかになった。英国Oxford Centre for Diabetes Endocrinology and MetabolismのStephen CL Gough氏らが、10月5日までベルリンで開催されていた欧州糖尿病学会EASD2012)で発表した。

 今回実施したメタ解析は事前に計画されたもので、両群とも同程度の血糖値を目指した上で、デグルデクがグラルギンに対し低血糖の発現が少ないかを検証することを目的とした。解析対象とした7つの試験は、いずれも1型・2型糖尿病患者を対象とした無作為化多施設共同オープンラベルのデグルデクの第3a相試験。すべての試験において、対照薬はグラルギンで(両製剤の投与はすべて1日1回)、試験期間は26週あるいは52週、朝食前血糖値(自己測定)が70mg/dL〜90mg/dL未満(3.9mmol/L〜5.0mmol/L未満)となるようにインスリン投与量を調節するtreat-to-target法を採用していた。

 解析対象は計4330例(デグルデク群2899例、グラルギン群1431例)。デグルデク群の内訳は、1型糖尿病が637例、2型糖尿病が2262例(うち1290例がインスリン治療歴なし)。同様にグラルギン群は順に321例、1110例(同632例)だった。また、全患者の21%が65歳以上の高齢者だった。ベースラインの患者背景は両群ほぼ同じで、脱落率はデグルデク群が16.0%、グラルギン群が13.8%だった。

 試験開始後15週までをインスリン投与量調節期間、16週から試験終了までを維持期間とした。また、すべての低血糖は第三者による介助を要したか血糖値56mg/dL未満(3.1mmol/L未満)の低血糖、夜間低血糖はすべての低血糖のうち午前0時1分から午前5時59分までに発現した低血糖とそれぞれ定義した。

 インスリン治療歴のない2型糖尿病患者において、デグルデク群のグラルギン群に対するすべての低血糖発現のERR(estimated rate ratio)を見ると、試験期間全体の場合、低血糖は0.83(件/人・年。95%信頼区間[95%CI]:0.70-0.98)と、デグルデク群の方がグラルギン群に比べ発現件数が17%少なく、統計的に有意であることが示された。夜間低血糖は0.64(95%CI:0.48-0.86)とデグルデク群は発現件数が36%少なく、また、重大な低血糖は 0.14(95%CI:0.03-0.70)と発現件数が86%少なく、それぞれ統計的に有意であることが示された。さらに、維持期間においては、すべての低血糖は0.72(95%CI:0.58-0.88)、夜間低血糖は 0.51(95%CI:0.36-0.72)と、それぞれ28%、49%少なく、統計的に有意であった。

 次に、2型糖尿病患者全体でデグルデク群のグラルギン群に対するERRを見ると、試験期間全体の場合、低血糖は0.83(95%CI:0.74 -0.94)、夜間低血糖は0.68(95%CI:0.57-0.82)と、デグルデク群の方がグラルギン群に比べ、それぞれ17%、32%少なく、統計的に有意であった。維持期間におけるすべての低血糖は0.75(95%CI:0.66-0.87)、夜間低血糖は0.62(95%CI:0.49-0.78)と、デグルデク群の方がグラルギン群に比べ、それぞれ25%、38%少なく、統計的に有意であった。重大な低血糖については、統計的に有意な差はなかった。

 1型糖尿病患者では、すべての低血糖発現に関して、試験期間全体、投与量調節期間、維持期間のいずれにおいても、両群間に統計的に有意な差は認められなかった。維持期間の夜間低血糖の発現件数については、グラルギン群に比べてデグルデク群において25%少なく、統計的に有意な差が認められた。なお、重大な低血糖は、両群間に統計的に有意な差はなかった。

 65歳以上の高齢患者におけるサブグループ解析では、デグルデク群のグラルギン群に対するすべての低血糖発現のERRは0.82(95%CI:0.66-1.00)で、デグルデク群で少ない傾向が見られた。同じく夜間低血糖発現は 0.65(95%CI:0.46-0.93)で、デグルデク群が35%少なく、統計的に有意に有意であった。

 こうした結果を基にGough氏は、「今回のメタ解析の結果は、デグルデクの有用性を裏付けるエビデンスと言えるのではないか。低血糖の経験や低血糖に対する恐怖感はインスリン療法による血糖コントロールの重大な障害となるが、低血糖の発現がより少ないデグルデクは、より積極的かつ安全な糖尿病治療を可能にすると考えられる。それに伴い、より厳格な血糖コントロールが実現され、糖尿病合併症の抑制に寄与するだろう」と総括した。

(日経メディカル別冊編集)