オーストラリア Monash UniversityのAnthony Dear氏

 GLP-1受容体作動薬であるリラグルチドが、動脈硬化プラークの形成および進展を抑制し、プラークの安定化を高める可能性が示唆された。動脈硬化モデル動物であるApoEノックアウトマウスを用いた研究により明らかになったもので、10月5日までベルリンで開催されていた欧州糖尿病学会(EASD2012)で、オーストラリア Monash UniversityのAnthony Dear氏らが発表した。

 リラグルチドは新しい機序の糖尿病治療薬だが、血管内での細胞接着分子の発現だけでなく、心血管イベント予測因子として知られる血管内皮細胞の機能障害を改善させることも示されている。また、生体内由来のGLP-1やGLP-1受容体作動薬が、アテローム性動脈硬化を抑制することも最近報告されている。そこで、Dear氏らはApoEノックアウトマウスを用いて、リラグルチドがアテローム性動脈硬化の進展抑制やプラーク安定化にどのような影響を与えるかを検討した。

 通常食で飼育された17週齢のApoEノックアウトマウスに高脂肪食を4週間導入し、動脈硬化早期発症モデルとした。これらのマウスを、生理食塩水を注射する群(対照群)、リラグルチド300μg/kgを1日2回皮下注射する群(リラグルチド群)、リラグルチド300μg/kgと特異的GLP-1受容体拮抗薬であるexendin-9を併用投与する群(併用群)の3群に分け、高脂肪食と並行して投与した。また、高脂肪食で12週間飼育した18週齢のApoEノックアウトマウスを動脈硬化性疾患モデルとし、早期発症モデルと同じく3群に分けて同様に4週間投与した。

 動脈硬化早期発症モデルにおいて、大動脈の内膜中膜比(intima media ratio:IMR)を測定すると、リラグルチド群は対照群に比べ有意な減少が認められ、併用群では減少幅がリラグルチド群より抑えられていた。また、oil red O染色で大動脈のプラーク面積率を見たところ、同様にリラグルチド群は対照群に比べ減少し、併用群では減少幅がリラグルチド群より抑制されていた。したがって、リラグルチドによる脂質蓄積の抑制効果はGLP-1受容体を介したものであることが示唆された。

 腕頭動脈(BCA)プラークの面積率をoil red O染色で評価したところ、リラグルチド群は対照群に対し有意な低下が認められ、併用群ではリラグルチド群より低下幅が抑えられていた。また、平滑筋細胞含有量をα-SMA染色で評価しても、プラーク安定化スコアで評価しても、リラグルチド群は対照群より有意に増加し、併用群は対照群と同程度であったため、リラグルチドのプラーク安定化作用もGLP-1受容体を介していることが示唆された。

 それに対し、動脈硬化性疾患モデルでは、IMRはリラグルチド群で低下したものの、対照群との有意差は認められなかった。また、oil red O染色で評価した大動脈のプラーク面積率については、リラグルチドによる減少作用は認められなかった。しかし、血管反応性試験において、内皮細胞の機能障害に対する有意な改善作用が確認された。

 Dear氏はこうした結果を踏まえ、「早期発症モデルにおいて、リラグルチドが動脈硬化プラークの形成や進展を抑制するとともにプラークを安定化させること、また、それはGLP-1受容体を介した作用であることが示された。動脈硬化性病変が存在する状況では、そうした作用は認められなかったが、内皮細胞の機能障害を改善した」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)