デンマークNovo Nordisk社のJ.Gundgaard氏

 低血糖は、健康関連のQOLHRQoLHealth Related Quality of Life)に対し負の影響を及ぼし、特に夜間低血糖は日中低血糖よりもHRQoLに大きく影響することが確認された。つまり、低血糖を回避すれば、HRQoLが大幅に改善することが示された。デンマークNovo Nordisk社のJ.Gundgaard氏らが、約1万人の一般住民を対象に行った調査で明らかにしたもので、成果は、10月5日までベルリンで開催されていた欧州糖尿病学会EASD2012)で発表された。

 低血糖は、血糖降下薬治療において高頻度にみられる副作用だ。特に夜間低血糖は予測することができないため、日中低血糖よりもHRQoLに大きな影響を及ぼす可能性があり、懸念されている。

 そこで今回Gundgaard氏らは、時間得失法(Time Trade-Off:TTO)を用いてHRQoLを定量化し、健康状態の主観的な評価の指標である効用値(utility)を推定することで、低血糖の影響を明らかにした。個々の患者が是正措置を講じることができる非重度低血糖と、外部からの支援が必要となる重度低血糖など、重症度によるHRQoLへの影響の差を検討した。また、日中低血糖と夜間低血糖の影響についても比較した。

 今回の試験は、オンライン調査を通じて欧米5カ国で実施した。一般住民1万1196人を登録し、アンケート無回答者などを除外し、8286人を対象とした。このうち、非糖尿病患者は7418人、1型糖尿病患者は146人、2型糖尿病患者は722人だった。

 調査の結果、健康問題を低血糖のない糖尿病とした場合、回答数7642件において、平均効用値は0.8440(95%信頼区間[CI]:0.8395〜0.8484)だった。

 これに対して、日中の非重症低血糖の場合、回答数7435件で、平均効用値は−0.0041(95%CI:−0.0035〜−0.0047)で、夜間の非重症低血糖の場合、回答数7347件で、平均効用値は−0.0067(95%CI:−0.0059〜−0.0074)と、それぞれ負の影響を与えていた。

 また日中の重症低血糖の場合、回答数3603件で、平均効用値は−0.0565(95%CI:−0.0527〜−0.0606)、夜間の重症低血糖の場合、回答数3647件で、平均効用値は−0.0622(95%CI:−0.0582〜−0.0663)で、それぞれ負の影響を与えていた。

 次に、夜間と日中について、非重症低血糖あるいは重症低血糖の影響について負の効用(disutility)を求めた。その結果、夜間の非重症低血糖は、日中の非重症低血糖に比べて、負の効用が0.0026(95%CI:0.0016〜0.0034)と有意に高かった。また、夜間の重症低血糖は、日中の重症低血糖に比べて、負の効用が0.0057(95%CI:−0.0001〜0.0114)と有意差は認められなかったが、高い傾向を示した。

 非糖尿病患者群、1型糖尿病患者群、2型糖尿病患者群の群間比較では、夜間の重症低血糖の負の効用において、2型糖尿病患者群が非糖尿病患者群よりも有意に高いことも分かった。

 これらの結果からGundgaard氏は、「HRQoLに対する低血糖の悪影響が確認された。特に、夜間低血糖は日中低血糖よりもHRQoLに大きく影響することが分かった」と結論。「低血糖を回避することは、HRQoLの大幅な改善につながることが確認された」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)