スウェーデンInstitute of MedicineのKatarina Eeg-Olofsson氏

 2型糖尿病で、血糖コントロール治療に反応し、長期にわたりHbA1c値が低下している人は、そうでない人に比べ、冠動脈疾患や心血管疾患、死亡リスクなどが、いずれも4〜5割減少することが、スウェーデンの1万2000人超を対象にした観察研究で明らかになった。成果は、スウェーデンInstitute of MedicineのKatarina Eeg-Olofsson氏が、10月5日までベルリンで開催されていた欧州糖尿病学会(EASD2012)で発表した。

 これまで、無作為化比較試験のメタ解析結果では、同様な結果が示されているが、実際の患者を対象にした調査結果は珍しいという。

 Eeg-Olofsson氏らは、スウェーデン全国糖尿病患者レジストリーの中から、2003〜2006年にかけて、2型糖尿病でHbA1c値が7〜8.9%、心血管疾患歴はなく、年齢30〜75歳の1万2359人について、2009年12月まで観察研究を行った。追跡期間の平均値は4.8年だった。BMIが18kg/m2未満、クレアチニン値が150mmol/L超の人は、除外した。

 研究グループは、被験者を、追跡期間中のHbA1c値変化の中央値が0.1ポイント以上減少した群(6841人)と、同値が同じか増加した群(5518人)に分類した。減少群の試験開始時HbA1c値平均は7.8%(標準偏差:0.5)で、追跡終了時の同平均値は7.0%(同:0.6)、HbA1c値減少幅は0.8ポイント(同:0.6)だった。一方、非減少群の試験開始時HbA1c値平均は7.7%(同:0.5)で、追跡終了時の同平均値は8.4%(同:0.9)、HbA1c値増加幅は0.7ポイント(同:0.8)だった。

 観察の結果、冠動脈性心疾患の発症率は、減少群が11.6/1000人・年に対し、非減少群は20.4/1000人・年だった。そのうち致死性の冠動脈性心疾患発生率は、減少群が3.3/1000人・年に対し、非減少群は5.5/1000人・年だった。心血管疾患の発症率は、減少群が16.9/1000人・年に対し、非減少群は29.8/1000人・年だった。致死性の心血管疾患の発生率は、減少群が10.2/1000人・年に対し、非減少群は15.3/1000人・年だった。

 減少群の非減少群に対する、冠動脈性心疾患発症に関するオッズ比は0.53(95%信頼区間[95%CI]:0.45〜0.62)、心血管疾患は0.53(95%CI:0.48〜0.61)だった(いずれもP<0.001)。致死性の心血管疾患の同オッズ比は、0.57(95%CI:0.43〜0.76)、総死亡は0.59(95%CI:0.50〜0.70)だった(いずれもP<0.001)。

 一方で、両群の治療内容について比較してみると、試験開始時と追跡期間中ともに、食事療法や経口治療薬、インスリン、抗高血圧薬、抗脂質異常症薬の投与の割合やその変化パターンは、両群で同等だった。また、喫煙者やタンパク尿症の割合、収縮期血圧値、低比重リポ蛋白値といったリスク因子とその変化パターンについても、両群で同等だった。

 会場からは、「追跡期間最後のHbA1c値が6.5%未満の人について個別に分析したか」との質問があり、「分析を始めてみたところ、そうした人は、HbA1c値を下げることであまり効用はなく、むしろリスク増加につながる傾向が認められた。試験開始時HbA1c値がより高い人の方が、HbA1c値の低下による効用が大きいようだ。ただし、この結果は最終的なものではない」と回答した。また、「治療に反応しなかった人について、その原因として、例えば痴呆症などを調べてみては」との意見があり、Eeg-olofsson氏は、「それはとても重要だと思う」と回答した。

(日経メディカル別冊編集)