英国Royal Liverpool University HospitalのJiten Vora氏

 インスリン デグルデクやインスリン グラルギンを投与した場合、デグルデク特異抗体あるいはグラルギン特異抗体の産生やヒトインスリンとの交差抗体の産生は、ほとんどの患者で認められなかった。また、長期治療に伴う免疫反応性は両薬剤とも同程度に低く、HbA1c値やインスリン投与量に臨床上問題となるような影響を与えないことが明らかになった。10月5日までベルリンで開催されていた欧州糖尿病学会(EASD2012)で、英国Royal Liverpool University HospitalのJiten Vora氏らが報告した。

 いずれのインスリン製剤もインスリン抗体の産生を誘導するものの、通常は産生量が少なく、血糖コントロールやインスリン投与量などにほとんど影響を与えないことが知られている。そこでVora氏らは、6つの第3a相試験のデータを用いて、新規の超持効型インスリン製剤のデグルデクと既存の持効型インスリン製剤のグラルギンの投与を受けている1型・2型糖尿病患者で、それぞれのインスリンの特異抗体の産生やヒトインスリンとの交差抗体の産生が、HbA1cの変化量あるいはインスリン1日投与量に与える影響の有無を検討した。

 解析対象とした臨床試験はいずれも無作為化オープンラベル試験で、目標とする血糖値を設定しインスリン投与量を調節するtreat-to-target法を用いており、試験期間は26週または52週、両製剤とも1日1回投与だった。そのうち、1型糖尿病を対象としたのが2試験(患者数はデグルデク群801例、グラルギン群321例)、2型糖尿病が4試験(同1747例、863例)。

 インスリン抗体については、52週の試験の場合は投与開始時(0週)、12週、26週、40週、投与終了時(52週)、追跡終了時(53週)に、26週の試験の場合は投与開始時(0週)、12週、投与終了時(26週)、追跡終了時(27週)に、subtraction radioimmunoassayにて%B/T(percent bound/total radioactivity、インスリン抗体の割合)を測定した。なお、抗体測定の際に投与されたデグルデクあるいはグラルギンの影響を受けないように、投与終了時から追跡終了時までの1週間はwash out期間とした。

 %B/Tの平均値を試験ごとに求めたところ、各試験でのデグルデク特異抗体は、投与開始時は0.0%から0.1%まで、追跡終了時は0.0%から0.4%までの範囲であり、いずれの試験でも低かった。グラルギンの場合も同様に試験ごとに算出すると、試験開始時は−1.3%から−0.9%まで、追跡終了時は−1.1%から1.1%までだった。

 ヒトインスリンとの交差抗体に関しては、1型糖尿病において、デグルデクでは投与開始時が11.2%から13.5%まで、追跡終了時が15.8%から19.3%まで、グラルギンでは試験開始時が11.5%から12.4%まで、追跡終了時が13.0%から14.3%までであった。一方、2型糖尿病において、デグルデクでは投与開始時が0.2%から4.0%まで、追跡終了時が0.5%から5.1%まで、グラルギンでは投与開始時が0.2%から3.3%まで、追跡終了時が2.4%から6.0%までで、いずれも低値であった。

 さらに、インスリン抗体の産生と、投与終了時までのHbA1c値の変化量やインスリン1日投与量との間に関連は認められなかった。

 これらを踏まえVora氏は、「デグルデクとグラルギンの投与によるインスリン抗体の産生はいずれも少なく、かつ同程度であった。また、産生されたインスリン抗体は、HbA1c値やインスリンの1日投与量に対して、臨床的に問題になるような影響を与えないことも確認された」と語った。

(日経メディカル別冊編集)