フランスUniversity Paris DiderotのBernard Portha氏

 GLP-1受容体作動薬リラグルチドによる高血糖改善の機序として、α細胞量の減少、グルカゴン産生・分泌の抑制が関与している可能性が示唆された。非肥満の2型糖尿病モデルであるGKラットを用いた研究から示されたもので、10月5日までベルリンで開催されていた欧州糖尿病学会(EASD2012)で、フランスUniversity Paris DiderotのBernard Portha氏らが報告した。

 リラグルチドの長期投与が体重や血糖、グルカゴン、α細胞などに与える影響を、8週齢の雄性GKラットを用いて検討した。具体的には、GKラットを、リラグルチド0.2mg/kgを1日1回、30日間にわたって皮下注射する群(リラグルチド群)と、GLP-1受容体作動薬は摂食量に影響することが知られているため、リラグルチド群と摂食量が同じになるよう調節し生理食塩水を30日間投与する群(生理食塩水群)に分けて、さまざまなパラメーターの変化を調べた。

 その結果、摂食量は通常のGKラットに比べ、リラグルチド群、生理食塩水群はともに3割前後有意に減少していた(P<0.001)。しかし、摂食量を等しくしていたにもかかわらず、30日後までのリラグルチド群の体重増加率は生理食塩水群の4分の1程度で、有意に少なかった(P<0.001)。これを踏まえPortha氏は、「体重減少には、摂食量の低下だけでなく、リラグルチドによるエネルギー消費の増加といった、他の何らかの機序が関与している可能性がある」との考えを示した。

 血漿血糖値の変化を見ると、両群とも投与前に比べ30日後は有意に減少していたが、その低下幅はリラグルチド群の方が有意に大きかった(P<0.05)。

 血漿グルカゴン値は両群とも30日後は有意に減少していたが(リラグルチド群はP<0.001、生理食塩水群はP<0.05)、リラグルチド群の減少率は約5割で、減少率は生理食塩水群より大きかった。そのため、30日後の値で比較すると、リラグルチド群の方が有意に低値だった(P<0.05)。

 しかし、β細胞量は両群に差はなく、リラグルチド投与による改善は認められなかった。ところが、α細胞量については、リラグルチド群は生理食塩水群より約4割有意に少なかった(P<0.05)。

 また、トリグリセライドの変化を見ると、両群とも有意に減少していた(いずれもP<0.001)。遊離脂肪酸についても、両群とも有意な減少が認められた(リラグルチド群はP<0.001、生理食塩水群はP<0.05)。

 一連の結果を総合的に勘案しPortha氏は、「リラグルチドはグルカゴン産生・分泌の抑制を通じて、高血糖状態に対し望ましい効果を発揮するのではないか」との考えを示した。グルカゴン値の低下に関しては、「α細胞量も減少していたが、α細胞にはGLP-1受容体はほとんど発現していないことから、リラグルチドがα細胞に直接作用するとは考えにくい。機序については、今後研究していきたい」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)