オーストリアMedical University of GrazのJulia Mader氏

 薬物に対する代謝・排泄能は加齢に伴い低下傾向を示すため、高齢者では若年者とは異なる投与設計を考慮すべきだとしばしば指摘される。しかし、新規の超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデクの薬物動態は、1型糖尿病患者において、高齢者若年成人で同程度であることが明らかになった。10月1日からベルリンで開催中の欧州糖尿病学会EASD2012)で、オーストリアMedical University of GrazのJulia Mader氏らが発表した。

 デグルデクは薬物動態/薬力学(PK/PD)に基づく検討により、1日1回の臨床用量で血糖降下作用が42時間を超えて持続するとともに、血糖降下作用の日間の個体内変動が小さいため、効果が長期にわたり安定的に維持されることが報告されている。そのため、患者の生活パターンに応じて注射時間を設定できるようになると期待されている。非臨床試験では、デグルデクのユニークな持続化の機序が、こうした薬理学的特徴につながることが示されている。今回、1型糖尿病患者において、65歳以上の高齢者と18〜35歳の若年成人のPK/PD特性を定常状態で評価した結果が報告された。

 本検討はクロスオーバー試験として行われ、対象患者を最初にデグルデク投与あるいはグラルギン投与する群に無作為に割り付け、それぞれ1日1回0.4U/kgを6日間反復投与した。さらに、7〜21日のwash out期間後に、もう一方の試験薬を6日間反復投与した。なお、今回はデグルデク投与時のデータだけを解析した結果が発表された。

 解析対象は若年成人群が13例(男性7例)、高齢者群が14例(男性6例)。ベースラインの年齢は若年成人群が27歳、高齢者群が68歳、糖尿病罹病期間はそれぞれ14年と41年だった。BMIは順に24.2 kg/m2と26.2 kg/m2、HbA1cは7.8%と7.7%、空腹時Cペプチドは0.01 nmol/Lと0.03 nmol/Lであり、年齢と罹病期間を除けば、両群間に違いはなかった。

 デグルデクのPK/PD特性については、定常状態におけるデグルデクの血中濃度推移曲線下面積(AUC)、最高血中濃度(Cmax)、グルコース注入速度(GIR)のAUC(GIR-AUC)を指標とし、対数変換した後、両群で比較した。PD の定常状態に関しては、6日間の治療期間における最終投与後に、空腹時血糖100mg/dL(5.5mmol/L)をターゲットとし26時間にわたってグルコースクランプ法により評価した。一方、PKの定常状態を評価するための血液検体は、各治療期間における最後の試験薬投与前から24時間にわたり頻回に採取した。

 その結果、定常状態におけるデグルデクのPK特性は、若年成人群と高齢者群でほぼ同様であった。デグルデクの総曝露量(平均値)の推定値は、若年成人群が82727pmoL*h/L、高齢者群が 85673pmoL*h/Lで、高齢者群の若年成人群に対する曝露量の比は1.04(95%信頼区間[95%CI]:0.73-1.47)だった。同じくCmaxの比は1.02(95%CI:0.74-1.39)で、いずれも統計的に有意な差は認められなかった。

 定常状態におけるGIRの総曝露量(平均値)の推定値は若年成人群が2457mg/kg、高齢者群が1923mg/kgだった。高齢者群の若年成人群に対するGIRの総曝露量の比は0.78(95%CI:0.47-1.31)。これらの結果から、デグルデクの血糖降下作用は両群でほぼ同程度と考えられた。

 Mader氏は以上から、「1型糖尿病患者においては、若年成人患者で示されるデグルデクの薬物動態は高齢患者においても保持されている」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)