カリフォルニア大学サンディエゴ校のRobert R. Henry氏

 皮下に挿入することでエキセナチドGLP-1受容体作動薬)を持続的に皮下投与することができるITCA650エキセナチド持続的皮下送達装置)の治験で、その最適レジメンは、当初12週間20mcg投与、その後は60mcg投与であることが、投与後24週までの試験で明らかになった。同試験の成果は、カリフォルニア大学サンディエゴ校のRobert R. Henry氏が、10月1日からベルリンで開催中の欧州糖尿病学会EASD2012)で発表した。

 ITCA650は、直径4ミリ、長さ44ミリの小型浸透圧ポンプを含むチタニウム製装置で、皮下に挿入すると、最大1年間、一定量のエキセナチドを持続的に投与することができるもの。従来のエキセナチドは、患者の自己注射投与を要し、また副作用に吐き気を伴うこともあり、そのコンプライアンスを高めることは難しかったという。ITCA650はこうした課題を克服するエキセナチドの新治療法として注目されている。

 Henry氏らは、2型糖尿病の患者155人を無作為に3群に分け、ITCA650を20mcg(51人)、40mcg(51人)、またはエキセナチドの1日2回注射投与(53人、4週目に5mcg/日から10mcg/日へ増量)を、それぞれ12週間行った。その後、各群をさらに無作為に2群に分け、20mcg群は20mcgまたは60mcg、40mcgは40mcgまたは80mcg、注射投与群はITCA650を60mcgまたは40mcg、それぞれ13〜24週目まで投与した。13〜24週の治療を完了した人の割合は、95%だった。

 被験者3群の年齢は53〜54歳、HbA1c値は7.9〜8.0%、体重は92〜94kg、糖尿病歴は5〜8年だった。

 試験の結果、40〜80mcg群は20mcgに比べ、HbA1c値や空腹時血糖(FPG)値、食後血糖(PPG)値をより改善する傾向が認められた。一方、80mcg群は、40mcg群や60mcg群に比べ副作用が多いものの、HbA1c値などへの効果は同等だった。

 そこで40mcg群と60mcg群を比較してみると、投与24週間におけるHbA1c値の平均減少幅は、40mcg群が1.0ポイントで、60mcg群は1.3ポイントだった。さらに、試験開始時のHbA1c値が7.5%以上だった人について見てみると、HbA1c値の平均減少幅は40mcg群が1.1ポイント、60mcg群は1.7ポイントだった。試験開始時のHbA1c値が8.0%以上では、HbA1c値の平均減少幅は40mcg群が1.0ポイントに留まったのに対し、60mcg群では2.1ポイントに上った。

 また、投与後24週でHbA1c値が7.0%以下に達した人の割合は、試験開始時のHbA1c値が7.0%超、7.5%超、8.0%超の人では、40mcg群でそれぞれ69.0%、61.3%、44.4%だったのに対し、60mcg群では67.6%、63.0%、61.1%に上った。

 HbA1c値が6.5%以下に達した人の割合は、試験開始時のHbA1c値が7.0%超、7.5%超、8.0%超の人では、40mcg群でそれぞれ33.3%、22.6%、5.6%だったのに対し、60mcg群では43.2%、40.7%、44.4%に上った。

 副作用については、吐き気や嘔吐が最も多く認められたが、そのほとんどが軽度から中程度で治療は必要なく、またそれが原因で服用を中止することは少なかった。また、当初20mcg投与から60mcgへ増加した人の中では、嘔吐が認められたり、投与を中止した人はいなかった。

 同研究グループは、ITCA650のレジメンとしては、被験者の多くがHbA1c値が8.0%超であると考えられ、当初20mcg用量から60mcgに増量するものが、HbA1c値や体重、生活の質(QOL)の改善効果や、副作用の点から最適だと結論づけた。また、来年第一四半期より、同レジメンによる6〜12カ月投与の治験第III相を開始するとした。

 会場からは、「膵炎を発症した人はいたか」との質問があり、Henry氏は、「(ITCA650に関する)これまでの試験で、膵炎を発症した人はいない」と回答した。

(日経メディカル別冊編集)