ドイツStiftung in der Deutschen Diabetes StiftungのDiethelm Tschöpe氏

 ST上昇型心筋梗塞STEMI)や非ST上昇型心筋梗塞NSTEMI)を発症した患者のうち、2型糖尿病の診断を受けている人の割合や未診断の糖尿病の割合は、いずれも、女性で男性より高率であることが分かった。また、糖尿病の診断を受けた人の3年死亡率は男女とも高いものの、中でも、新たに糖尿病の診断を受けた女性の3年死亡率は、既に診断を受けていた人と同等で、非糖尿病の女性の3倍にも上っていた。

 これは、ドイツStiftung in der Deutschen Diabetes StiftungのDiethelm Tschöpe氏らが、STEMI・NSTEMI患者約2800人について行ったコホート研究の結果明らかにした。成果は、10月1日からベルリンで開催中の欧州糖尿病学会(EASD2012)で発表された。

 Tschöpe氏らは、ドイツ内30カ所の医療機関を通じて、STEMI・NSTEMIの患者2767人について、前向きコホート研究「SWEETHEART」を行った。目的は、ドイツにおけるSTEMI・NSTEMI患者の、潜在的耐糖能異常(IGT)や空腹時高血糖(IFG)、糖尿病の罹患率と、性別格差の有無を見極めることなどだった。被験者は、既に糖尿病の診断を受けている人を除き、ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けた。追跡期間は3年とした。

 被験者のうち、男性は2061人(74.5%)、女性は706人(25.5%)、平均年齢は男性が63.8歳、女性が71.3歳と、女性の方が高齢だった(P<0.001)。

 心筋梗塞歴がある人の割合は、男性が18.8%に対し女性は13.0%、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)歴も男性が18.1%に対し女性は12.0%といずれも女性で低かった(いずれもP<0.001)。また、診断を受けている糖尿病患者の割合は、男性が23.1%に対し、女性は30.2%と高率だった(P<0.001)。

 試験の結果、新たに診断された糖尿病の割合は、男性が15.3%に対し女性は19.7%と、女性で有意に高率だった(P<0.01)。一方新たに診断されたIGT・IFGの割合は、男性が23.1%に対し女性は18.1%と、女性で有意に低率だった(P<0.01)。既知の糖尿病を含めると、糖尿病またはIGT・IFGの割合は、被験者の女性の68.0%、男性の60.5%に上った。

 3年死亡率について見てみると、女性では、既に糖尿病の診断を受けていた人が30%、新たに診断を受けた人も30.5%と同等で、非糖尿病の死亡率10.8%のおよそ3倍にも上った。一方の男性では、既に糖尿病の診断を受けていた人の死亡率は35.4%だったのに対し、新たに診断を受けた人の死亡率は21.8%と、非糖尿病の死亡率の11.2%の2倍に留まった。

 なお、男女ともに、IGT・IFGの3年死亡率は、非糖尿病の死亡率と同等だった。

 同セッションのコメンテーターは、今回の試験結果で、心筋梗塞患者の6割以上が糖尿病またはIGT・IFGであることが確認されたことを受けて、「急性心血管疾患を発症した全ての患者について、糖尿病の検査を行うべきであることが改めて確認された」と語った。これに対しTschöpe氏は、「全く同感だが、現場でそれを実行するには外科医を含め複数の医師の協力が必要で、“厳しい戦いである”」と述べた。

 会場からはまた、新たに診断を受けた糖尿病患者の女性死亡率が、同男性死亡率より高い点の理由について質問があり、Tschöpe氏は、「私の推察でしかないが、新たに診断を受けた時点で、女性は男性よりも、糖尿病を発症してから時間が経過しているのかもしれないし、また、診断後の治療反応などが異なるのかもしれない」などと考察した。

(日経メディカル別冊編集)