オランダSchool for Mental Health and NeuroscienceのP.J.J. Spauwen氏

 12年間におよぶ観察の結果、2型糖尿病だった参加者では、糖尿病でなかった参加者に比べて明らかに認知機能の低下が加速していたことが示された。認知機能に及ぼす糖尿病の影響を調べたコホート研究(MAAS)で明らかになったもので、オランダSchool for Mental Health and NeuroscienceのP.J.J. Spauwen氏らが、10月1日からベルリンで開催中の欧州糖尿病学会EASD2012)で発表した。

 対象は、Maastricht Aging Study (MAAS)に参加している1290人(試験開始時に40歳以上)。試験開始時、6年後、12年後に認知機能の試験を実施した。参加者のうち、68人が試験開始時に2型糖尿病だった。また、追跡期間中6年後までに54人、12年後までに57人が新たに糖尿病を発症した。

 参加者には、認知機能を評価するための情報処理速度、実行機能、言語記憶に関する試験を実施。登録時から6年後、12年後にどのように変化したのかをグループ間で比較した。認知機能低下に及ぼす糖尿病の影響は、人口統計学的変量、喫煙歴、アルコール摂取量、および高血圧、心血管疾患、体格指数、うつ症状などの併発状態で補正した。

 患者背景をみると、開始時に糖尿病だった群は、非糖尿病群に比べて、年齢が高い、教育水準が低い、BMIが高い、CVDあるいは高血圧の割合が高い――などの特徴があった。

 線形混合モデル分析を用いて認知機能の変化を調べた結果、試験開始時に糖尿病であった群は対照群に比べ12年間の追跡期間中にわたり、情報処理、実行機能および遅延型の言葉の思い出し(一度記憶したあと、しばらく時が経ってから思い出す能力)に大きな低下が見られた(人口統計学的変量、喫煙歴、アルコール摂取、および併発状態で補正後)。

 一方、即時の言葉の思い出し(記憶直後に思い出す能力)に関しては低下に有意な差は見られなかった。興味深いことに、途中で糖尿病を発症した参加者では、どの認知機能に関しても対照群に比べて大きな低下は認めなかった。

 これらの結果から演者らは、「本試験では試験開始時に2型糖尿病であった参加者では、糖尿病でなかった参加者に比べて明らかに認知機能低下が加速していた」と結論した。一方で、途中で糖尿病を発症した参加者にはこのような低下は見られなかった点については、認知機能障害の予防と治療の可能性を示唆するもの、と考察した。その上で、糖尿病の初期段階に認知状態を評価すること、定期的に認知評価を繰り返し行うことが重要であると指摘した。

(日経メディカル別冊編集)