松山市民病院(愛媛県)の新谷哲司氏

 うつ状態が認められる糖尿病患者にとって、糖尿病教育には、うつ症状を和らげる効果が期待できるようだ。教育入院の2型糖尿病患者を対象に2週間の自己管理教育を含む糖尿病教育プログラムを実施したところ、うつ状態が認められた糖尿病患者のZungうつ状態自己評価尺度(SDS)スコアが教育の前後で有意に減少していた。松山市民病院(愛媛県)の新谷哲司氏らの検討結果で、10月1日からベルリンで開催中の欧州糖尿病学会EASD2012)で発表した。

 演者らはうつ状態のみられる糖尿病患者が目立っていることから、その対策を検討するために、まず、糖尿病教育がうつ症状に与える影響について調査した。

 試験対象は、糖尿病教育プログラムに参加するために松山市民病院に入院した2型糖尿病患者528人。年齢は60.9±11.1歳、男性330人、女性198人、HbA1c値は9.3%±1.9%だった。教育プログラム実施前後に、SDSを用いて参加者のうつ症状を評価した。プログラムでは、血糖管理を達成するよう努め、糖尿病性合併症を把握するとともに、入院中に2週間は自己管理教育を実施した。SDSスコアおよび3つのサブスケールのスコア(感情、生理的随伴症状、心理的随伴症状)の変化を糖尿病教育プログラムの前後で調べた。

 その結果、糖尿病教育を実施する前にうつ症状のなかった糖尿病患者数は232人(43.9%)であった。軽度のうつ状態の糖尿病患者は167人(31.6%)、中程度/重度のうつ状態の患者は129人(24.4%)であった。

 糖尿病教育プログラム実施の前後でSDSスコアの変化をみると、うつ症状のある全患者において有意に減少した(40.6±8.9 から39.7±9.0、P=0.0025)。うつの程度別では、軽度のうつ状態の患者で43.4±2.3から41.3±6.5(P=0.0001)へ、中程度/重度の患者では51.9±3.6から47.8±6.9(P<0.0001)へ、それぞれ有意に減少した。一方、うつ症状のない患者では、SDSスコアは有意に増加した(32.2±4.5から34.1±7.5、P=0.0007)。

 サブスケール別に見ると、心理的随伴症状スコアはうつ症状のある全患者で有意に減少した(軽度、中程度/重度ともにP<0.01)。生理的随伴症状スコアも、うつ症状のある全患者で有意に減少した(軽度がP<0.05、中程度/重度がP<0.01)。感情スコアは、全患者で有意な変化は認められなかった。

 これに対し、うつ症状のない患者では生理的随伴症状スコア、心理的随伴症状スコアともに有意に増加した(P<0.01)。

 演者らは、「今回の試験結果は、糖尿病教育が2型糖尿病患者においてうつスコアの心理的随伴症状、生理的随伴症状に影響を与えることを示唆している」とまとめた。うつ症状のない患者で生理的随伴症状スコア、心理的随伴症状スコアともに有意に増加した点については、糖尿病の理解が深まったことを反映しているのではないか、と考察した。

(日経メディカル別冊編集)