スウェーデンUppsala大学のBjörn Zethelius氏

 糖尿病患者において、余暇時間身体活動レベルが高いほど、脳血管疾患(CVD)、冠動脈性心疾患総死亡のリスクが低下することが分かった。また、観察期間中に余暇時間の身体活動が増加した群は、依然低いままだった群に比べCVDと死亡率のリスクが低下することが示された。スウェーデンUppsala大学のBjörn Zethelius氏が、ベルリンで10月1日から開催中の欧州糖尿病学会EASD2012)で発表した。

 余暇時間の身体活動(LTPA)が高い糖尿病患者は、CVDによる死亡率が低下することが報告されている。しかしながら、これらの先行研究では、従来のCVDリスク因子ではなく、CVDリスクと身体活動、糖尿病患者の全死因における死亡率との関連を検討している。そこで今回Zethelius氏らは、2型糖尿病患者におけるCVDのリスク因子を考慮して、LTPAレベルとCVDリスクおよび全死因における死亡率との関連を評価するため観察研究を実施した。

 対象は、心不全および心房細動の既往がなく、BMIが18kg/m2以上、血漿クレアチニン濃度が150μmol/L未満、年齢が30〜74歳の2型糖尿病患者とした。スウェーデンの日常診療における2型糖尿病患者の全国調査データから、1万5462例のデータセットを用いた。2型糖尿病の定義は、経口薬のみの治療をしている症例、食事療法のみの治療をしている症例、あるいは40歳以降で糖尿病を発症しインスリン単独治療またはインスリンと経口薬の併用療法を行っている症例とした。LTPAレベルは、身体活動を全くしない(レベル1)、週に1回以下(レベル2)、週に1〜2回(レベル3)、週に3〜5回(レベル4)、毎日(レベル5)の5段階に分類し、ベースライン時および試験終了時に調査した。

 解析では、ベースライン時のLTPAレベル、ベースライン時と試験終了時のLTPAレベルの変化に応じて、以下の4グループに分類した。はじめに、ベースライン時のLTPAレベルがレベル1〜3と低い群をグループAとし、レベル4〜5と高い群をグループBとした。次に、ベースライン時と試験終了時のLTPAレベルがいずれも1〜3と変わらずに低かった群をグループCとした。グループBに加え、ベースラインのLTPAレベルは1〜3と低いが試験終了時にはレベル4〜5と普通以上に上昇した群をグループDとした。

 エンドポイントは致命的もしくは致命的でないCVD(冠動脈性心疾患もしくは脳卒中)とした。Cox回帰分析により、LTPAレベルおよびCVDリスク因子と全死因における死亡率との関連を評価した。

 まず、グループA(6963例、59.4歳)とグループB(8499例、60.4歳)を比較したところ、糖尿病罹患期間、HbA1c値、収縮期血圧、BMI、トリグリセリド値、喫煙割合、アルブミン尿などの項目において有意にグループAで高かった。一方で、HDL-C値のみが、グループBで有意に高かった。治療法としては、食事療法のみの割合がグループAで有意に低く、インスリンと経口薬の併用療法の割合がグループBで有意に高かった(いずれもP<0.001)。グループC(4166例、59.4歳)とグループD(1万1296例、60.1歳)を比較したところ、グループAとグループBを比較した場合と同様の結果だった。

 5年間のフォローアップ期間において初めて致命的もしくは致命的でない冠動脈性心疾患が発生した人数は、グループAで276例(4.0%)、グループBで261例(3.1%)、グループCで219例(5.3%)、グループDで318例(2.8%)となり、患者全体では537例(3.5%)だった。致命的もしくは致命的でないCVDはグループAで391例(5.6%)、グループBで369例(4.3%)、グループCで420例(7.4%)、グループDで567例(4.2%)、患者全体では760例(4.9%)。致命的なCVDは、グループAで76例(1.1%)、グループBで52例(0.6%)、グループCで64例(1.6%)、グループDで64例(0.6%)、患者全体で128例(0.8%)。全死亡率は、グループAで235例(3.4%)、グループBで192例(2.3%)、グループCで192例(4.7%)、グループDで235例(2.1%)、患者全体では427例(2.8%)だった。全体的に、グループAよりグループB、グループCよりグループDで発生率が低かった。

 フォローアップの5年間で初めて致命的もしくは致命的でない冠動脈性心疾患が発生するハザード比をモデル1(年齢、性別、糖尿病罹患期間、喫煙歴、糖尿病治療薬の種類で調整)で解析すると、グループAに対しグループBのハザード比は0.80(95%信頼区間:0.67-0.95、P=0.01)と有意に低かった。モデル2(モデル1と同様の共変量に加え、BMI、収縮期血圧、HbA1c値、LDL-C値、HDL-C値、トリグリセリド値およびアルブミン尿などの共変量を、ベースライン時の共変量全てを含めて患者ごとに作成した傾向スコアで調整)で解析すると、0.84(同:0.71-1.00、P=0.05)となった。

 同様に、致命的もしくは致命的でないCVDのハザード比はモデル1で解析すると0.79(同:0.69-0.92、P=0.002)、モデル2で解析すると0.86(同:0.74-0.99、P=0.04)。致命的なCVDのハザード比はモデル1で解析すると0.59(同:0.42-0.85、P=0.004)、モデル2で解析すると0.66(同:0.46-0.95、P=0.02)。全死亡率のハザード比は、モデル1で0.68(同:0.55-0.82、P<0.001)、モデル2で0.71(同:0.58-0.87、P<0.001)と、いずれもベースライン時のLTPAレベルが高いグループBのハザード比が有意に低かった。

(日経メディカル別冊編集)