フランスCHU LapeyronieのAriane Sultan氏

 2型糖尿病ハイリスク患者で、末梢動脈疾患が認められると、総死亡リスクは4.1倍に、心血管疾患死のリスクは3.9倍に増大することが明らかになった。これは、フランスCHU LapeyronieのAriane Sultan氏らが、2型糖尿病ハイリスクの患者700人超について、前向きコホート試験で約6年間追跡し明らかにしたもの。成果は、10月1日にベルリンで開幕した欧州糖尿病学会EASD2012)で発表された。

 Sultan氏らは、無症候性2型糖尿病で心血管疾患リスクが1つ以上認められる患者706人について、1999年から平均6年(標準偏差:2.6年)追跡し、総死亡と心血管疾患死のリスク因子について分析した。被験者の末梢動脈疾患については、2人の医師が触診を行い、末梢血管脈拍の有無を調べた。末梢動脈疾患ステージII〜IVが認められる人は、被験者に含めなかった。

 被験者のうち、男性は58%、60歳超は59%(平均62歳)、平均糖尿病歴は13.8年、平均HbA1c値は8.35%だった。微量アルブミン尿症またはタンパク尿症が29%に認められ、クレアチニンクリアランスが60mL/min未満が15%、インスリン治療を受けていたのは46%だった。

 心血管疾患リスクについては、低比重リポ蛋白(LDL)の平均値は1.10/L、高比重リポ蛋白(HDL)の平均値は0.53/Lで、スタチンを服用していたのは54%、高血圧症は60%、喫煙者は47%に上った。

 追跡期間中、死亡したのは67人(9.5%)で、そのうち57人が心血管疾患による死亡だった。多変量分析で、総死亡リスク因子について見てみたところ、ステージI末梢動脈疾患とインスリンの使用がリスク因子であり、それぞれのハザード比は4.1(95%信頼区間:2.4〜7.1)と2.4(同:1.1〜4.1)だった。

 また、心血管疾患死のリスク因子についても、ステージ1末梢動脈疾患がハザード比3.9(同:2.0〜7.5)と、最大のリスク因子だった。その他、収縮期血圧130mmHg以上(ハザード比:2.8、同:1.3〜5.8)、LDLコレステロール値0.7g/L以上(同:2.6、同:1.2〜5.4)などが認められた。

 Sultan氏は、糖尿病患者の心血管疾患死の予測因子としては、従来のリスク因子に加えバイオマーカーもあるが、検査費用が高額であり、糖尿病患者数が増えている現状では実用的でない点を指摘した。その上で、今回の試験結果から、「安価でシンプルなルーチンの臨床検査が極めて重要なことが確認された」と結論づけた。

 会場からは、今回の試験で採用した末梢動脈疾患の具体的な診断方法に関する質問があり、Sultan氏は、「2人の医師が、末梢血管脈拍が1カ所以上で感じられない場合」と確認した。また、糖尿病歴や喫煙の有無が、いずれの死亡リスク因子でもなかった点について、予想外だとする意見があった。

(日経メディカル別冊編集)