英国シェフィールド大学のD.Selvarajah氏

 糖尿病は、脳の萎縮を加速させ、認知症のリスクを高める可能性が指摘されている。しかし、脳が萎縮する詳細なメカニズムはまだ明らかではない。そこで、MRIを用いて糖尿病性神経障害(DN)の患者の脳萎縮を調べたところ、DN患者はDNでない患者や健常人に比べて、灰白質のボリュームが小さく辺縁部の萎縮が進行していることなどが示された。10月1日からベルリンで開催中の欧州糖尿病学会EASD2012)で英国シェフィールド大学のD.Selvarajah氏らが発表した。

 対象は、1型糖尿病患者48人(非DN群22人、痛みのあるDN群14人、痛みのないDN群12人)と、健常群17人。いずれの群も性別の割合は同等で、平均年齢は群間で差があり(健常群48.6歳、非DN群37.3歳、痛みのないDN群51.4歳、痛みのあるDN群45.8歳)、健常群以外の群における糖尿病網膜症スコアも群間で差があった。

 年齢、性別、糖尿病性網膜症を共変数とし、灰白質の大きさについて共分散解析(ANCOVA)を行った。その結果、灰白質全体の体積は、健常者群805mL、非DN群794mL、痛みのあるDN群763mL、痛みのないDN群779mLと有意に差があり(ANCOVA、P=0.01)、痛みのあるDN群と痛みのないDN群は、いずれも健常群および非DN群に比べて小さかった。

 萎縮が進行している部位は、灰白質の辺縁部が主だった(健常者群636mL、非DN群627mL、痛みのあるDN群604mL、痛みのないDN群614mL(ANCOVA 、P=0.03)。白質や脳質性脳脊髄液においては、群間で有意な差は見られなかった。また、痛みのあるDN群と痛みのないDN群の間にも有意差は見られなかった。

 Selvarajah氏は、「今回の結果から、痛みのあるなしに関わらず、DN患者で灰白質辺縁の萎縮が進んでいることが示された。神経障害が生じる過程が、脳の萎縮に重要な影響を及ぼしている可能性もあり、さらなる前向き縦断的研究が必要だ」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)