ドイツRuhr-Universität Bochum大学のF.Petrak氏

 糖尿病合併うつ病患者の大多数がうつ病治療に対するアドヒアランスが低く、また、非アドヒアランスであることはうつ病治療に対する患者の応答が不十分となる強力な予測因子であることが示された。ドイツRuhr-Universität Bochum大学のF.Petrak氏が、10月1日からベルリンで開催中の欧州糖尿病学会EASD2012)で発表した。

 糖尿病合併うつ病患者において、うつ病が糖尿病治療のアドヒアランスを低下させることは知られている。しかしこれらの患者において、うつ病治療のアドヒアランスも同様に低下させるかはまだ明らかにされていない。そこで今回Petrak氏らは、コントロール不良の糖尿病合併うつ病患者において、うつ病治療のアドヒアランスを多施設共同試験によって分析した。

 対象は、インスリン治療中かつHbA1cが7.5%超の1型もしくは2型糖尿病患者で、うつ病を合併している症例とした。うつ病はDSM-IVの定義を採用した。対象を、セルトラリン50〜200mgを処方するSER群(120例)と、認知行動療法のグループセッションを10回行うCBT群(126例)の2種類のうつ病治療群に無作為に割り付けた。12週後にハミルトンうつ病評価尺度を用いて評価し、ベースラインから50%低下、もしくはスコアが7点以下となった場合に、うつ病治療に対する応答を示したものとした。

 SER群の治療アドヒアランスは、血清中のセルトラリン濃度とN-デスメチルセルトラリン濃度を治療の8週間後と12週間後に測定し、血清中濃度が目標範囲内だった回数によって定義した。血清中濃度が2回とも目標範囲内だった場合はアドヒアランス、1回だけ目標範囲内だった場合は部分的アドヒアランス、1度も目標範囲内に到達しなかった場合は非アドヒアランスとした。

 一方、CBT群の治療アドヒアランスは、セッション参加数ごとに定義した。参加回数が10回〜8回をアドヒアランス、7回〜1回を部分的アドヒアランス、0回を非アドヒアランスとした。

 試験の結果、SER群の治療アドヒアランスをみると、アドヒアランス38.3%、部分的アドヒアランス28.3%、非アドヒアランス33.3%となった。CBT群の治療アドヒアランスの方は、アドヒアランス54.0%、部分的アドヒアランス26.2%、非アドヒアランス19.8%となった。

 SER群とCBT群の両群で非アドヒアランスだった患者は、アドヒアランスだった患者に比べ、インスリンポンプを使用する人数が有意に多かった(28例 対 13例)。また、HbA1c値(9.4±1.6% 対 9.0±1.3%)、うつ病の重症度(ハミルトンうつ病評価尺度が25以上の患者数、16例 対 3例)も有意に高かった(いずれもP<0.05)。

 SER群とCBT群の両群でアドヒアランスだった患者は、部分的アドヒアランスもしくは非アドヒアランスだった患者に比べ、12週後に観察された治療応答率が有意に高かった。SER群のオッズ比は4.7(95%信頼区間[CI]:2.1-10.5、P<0.001)、CBT群のオッズ比は5.4(95%CI:2.4-12.2、P<0.001)だった。

 これらの結果からPetrak氏は、「CBT群のうち、十分な回数のグループセッションに参加した患者はわずか54%で、SER群でも大半が十分な服薬をしていなかった。糖尿病合併うつ病患者の大多数がうつ病治療に対し非アドヒアランスだった。また、非アドヒアランスは、セルトラリンによる投薬治療または認知行動療法に対する患者の応答が不十分となる強力な予測因子であることが分かった」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)