ギリシャAthens University Medical SchoolのStavroula Kalopita氏

 糖尿病における低血糖の発現は、不整脈や死亡リスクの上昇と関連することが知られている。このほど、2型糖尿病患者を対象に、血糖値と心電図の同時連続測定を行った研究から、低血糖の発現時にQTc間隔の延長がみられることが明らかになった。ギリシャAthens University Medical SchoolのStavroula Kalopita氏らが、9月12日から16日までリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD2011)で報告した。

 低血糖は1型糖尿病やインスリンで治療中の2型糖尿病患者で高頻度に発現し、1型糖尿病では不整脈や突然死と関連することが分かっている。また、2型糖尿病を対象に強化血糖低下療法の有用性を検討した大規模臨床試験において、強化療法に伴う低血糖が死亡リスクを上昇させることも示された。

 Kalopita氏らはギリシャLaiko General Hospitalの糖尿病センターを受診した2型糖尿病患者26人を対象として、血糖値と心電図の同時連続測定を実施し、低血糖発現とQTc延長の関連を調べた。対象者のうち7人はインスリン、19人はインスリン分泌促進薬の投与を受けていた。対象者の血清電解質は正常で、QTc間隔に影響を与える可能性のある薬剤は投与されていなかった。

 血糖値測定には皮下持続血糖測定システム(CGMS)を、QTc間隔はホルター心電計を用いて、同時に連続48時間測定した。70mg/dL未満の血糖値が5分間を超えて継続した場合を低血糖、70〜120mg/dLの場合を正常血糖とした。

 対象の年齢は60.3歳、男性比率は53.8%、糖尿病罹患期間は6.9年、BMIは31.4kg/m2だった。血清脂質プロファイルは総コレステロール値が162.5mg/dL、トリグリセライド値が149.9mg/dL、HDL-コレステロール値が49.5mg/dL、LDL-コレステロール値が78.8mg/dL、血糖プロファイルは空腹時血糖値が135.2mg/dL、HbA1cは6.73%などだった。

 48時間の測定期間中、低血糖は13人で26件記録されたが、自覚症状を訴えたのは5人のみだった。低血糖が記録された13人のうち5人はインスリン投与を、8人はインスリン分泌促進薬の投与を受けていた。夜間低血糖は5件記録されたが、すべて無症状だった。記録された低血糖の中で血糖値が最も低かったのは28mg/dLであった。

 低血糖が記録された13人の低血糖時の平均血糖値は59.2mg/dL、正常血糖時の平均血糖値は98.7mg/dLで、QTc間隔は低血糖時には431.4m秒、正常血糖時には416.6m秒と、低血糖時の方が有意に長かった(p=0.015)。

 これらの結果からKalopita氏は、「1型糖尿病と同様、インスリンまたはインスリン分泌促進薬が投与されている2型糖尿病患者でも、中等度の低血糖によりQTc間隔が延長することが示された」と結論し、「低血糖を頻回に発現するリスクを伴う強化血糖低下療法で死亡リスクが上昇した要因の1つとして、低血糖によるQTc間隔の延長が関与している可能性がある」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)