オランダTilburg UniversityのG. Nefs氏

 糖尿病でない人に比べると、2型糖尿病患者ではうつ病のリスクが2倍となり、患者のおよそ5人に1人は発症する。しかし、普段の診療においては、うつ病があまり重視されずに慢性化している可能性があることが報告された。2型糖尿病患者におけるうつ病の発症率と再発/持続率を検証したコホート研究の結果、明らかになった。オランダTilburg UniversityのG. Nefs氏らが、9月12日から16日までリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD2011)で発表した。

 コホートには、2型糖尿病患者2460人が登録している。2005年のベースライン時と、フォローアップとして2007年と2008年の計3回、臨床状態やうつ症状を含む心理的要因などの評価を行った。うつ病の発症および再発/持続については、この3回の評価からのデータを用いた。なおうつ病の診断基準は、エジンバラうつ尺度(EDS)においてスコアが12以上とした。

 試験では、段階的ロジスティック回帰分析を用いて、うつ病の発症および再発/持続がベースラインでの次の3項目によって予測できるかどうか検証した。(1)人口統計学的因子(女性、年齢、独身、低学歴)、(2)併存疾患罹病率(心血管疾患の既往症、現存の微小血管合併症、その他の合併症歴)、(3)ストレスのたまる生活上の出来事、うつ病歴の自己申告(再発/持続のみ)。

 解析の結果、2005年、2007年、2008年の3回の評価で1回以上、うつ病と診断された人は630人だった。この間の、うつ病の有病率は、26%(630/2460)だった。

 今回の研究で着目した経過をみると、うつ病の有病率は、ベースラインの2005年で12%、2007年で14%、2008年で16%と増加していた。ベースライン時に、うつ病と診断されていなかった2140人(非うつ病群)と、うつ病と診断された320人(うつ病群)のそれぞれの経過をみると、非うつ病群では、2007年と2008年に1度でもうつ病と診断された人は310人(14%)となった。一方、ベースライン時にうつ病と診断されたうつ病群(320人)のその後をみると、2007年と2008年に1度でもうつ病と診断された人(再発/持続)は212人で、実に66%と高率だった。

 これらのデータをもとに、2008年までの追跡期間中において、うつ病の危険因子を分析した結果、全体では、女性(オッズ比:1.74、95%信頼区間:1.39-2.17)、低学歴(同:1.75、同1.28-2.38)、その他の併存疾患(同:1.36、同:1.07‐1.73)、ストレスのたまる生活上の出来事(同:1.86、同:1.46‐2.38)、うつ病歴(自己申告、同:4.90、同:3.53‐6.82)が浮かび上がった。ベースライン時にうつ病と診断されなかった非うつ病群では、女性(同:1.63、同:1.20‐2.21)、低学歴(同:1.62、同:1.12‐2.36)、うつ病歴(同:3.27、2.05‐5.22)が危険因子だった。ベースライン時にうつ病と診断されていたうつ病群では、うつ病歴(同:2.54、同:1.23-5.23)が危険因子だった。いずれの群においても、危険因子としては、「うつ病歴」が重要であることが明らかになった。

 これらの結果から演者らは、「うつ病は2型糖尿病患者によく見られ、しばしば慢性化することが、今回の検討で改めて明らかになった」と結論した。また、「効果的な抗うつ薬があるにも関わらず、うつ病と診断される割合は一般的に低い」と考察し、「日常診療で精神衛生上の観察は行われているはずだが、もっと積極的な取り組みが必要」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)