英国Harris Manchester CollegeのDavid R. Matthews氏

 2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬の臨床的有用性は示されているが、投与を開始する最適なタイミングは明らかでなかった。英Harris Manchester CollegeのDavid R. Matthews氏らは、過去に行われたフェーズ3試験(計7試験)のデータから、経口糖尿病治療薬の使用を開始していないか1剤のみ使用している早期の患者では、GLP-1受容体作動薬リラグルチドの血糖管理効果がより大きくなることを明らかにした。研究結果は、9月12日から16日までリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD2011)で報告された。

 これまでに行われたフェーズ3a試験とフェーズ3b試験では、インスリン非依存状態の2型糖尿病患者にさまざまなタイミングでリラグルチドを投与すると、血糖管理の向上や体重減少が見られることが示されている。

 演者らは、これらのデータを利用して、経口糖尿病治療薬の使用歴から推定される患者の病期が、26週間のリラグルチド投与によって得られる臨床効果に及ぼす影響を調べることで、臨床効果を踏まえた、より適切な投与開始のタイミングを同定しようと考えた。

 7件の試験に登録された4625人から条件を満たす患者を選び、リラグルチドまたはプラセボに割り付ける前の経口糖尿病治療薬の使用歴に基づいて患者を層別化した。生活改善のみを行っていた患者と経口糖尿病治療薬1剤を使用していた患者は早期開始群、経口糖尿病治療薬を2剤以上使用していた患者は遅延開始群とした。糖尿病歴の平均は、早期開始群が6年、遅延開始群が9年だった。

 早期開始群のうち492人(平均年齢:53.7歳)にはリラグルチド1.8mg、432人(以下同:55.2歳)にはリラグルチド1.2mgが、63人(55.0歳)にはプラセボが投与されていた。遅延開始群では、355人(57.4歳)がリラグルチド1.8mg、28人(54.5歳)がリラグルチド1.2mg、112人(56.2歳)がプラセボの投与を受けていた。なお、試験期間中はすべての患者が、割り付け前から使用していた経口糖尿病治療薬の使用を継続した。

 解析の結果、HbA1c値のベースラインから26週までの変化は、どの割り付け群でも、遅延開始群に比べて早期開始群で有意に大きかった。

 リラグルチド1.8mg投与群では、ベースラインからのHbA1c値の変化は、早期開始群が−1.55%、遅延開始群は−1.18%で、両群の差は−0.36パーセンテージポイント(95%信頼区間:−0.52 〜 −0.20、p<0.0001)になった。リラグルチド1.2mg群では、早期開始群が−1.38%、遅延開始群が−0.82%で差は−0.56パーセンテージポイント(95%信頼区間:−0.92 〜 −0.19、p=0.0027)、プラセボ群でも、−0.46%と0.09%で差は−0.55パーセンテージポイント(95%信頼区間:−0.87 〜 −0.22、p=0.0010)で、差はすべて有意だった。

 26週時点で、EASDがHbA1cの目標値としている7%未満を達成していた患者の割合は、リラグルチド1.8mgの早期開始群が72%、遅延開始群が49%、オッズ比は2.76(95%信頼区間:1.75-4.34、p<0.0001)で有意な差が得られた。1.2mg群でもそれぞれ61%と41%でオッズ比は2.28(同:0.74-7.03、p<0.1526)で、早期開始群の方が好ましい傾向を示したが差は有意にならなかった。プラセボ群は14%と9%でオッズ比は1.78(0.69‐4.56、p=0.2311)だった。

 次に、β細胞の機能をHOMA-Bとプロインスリン:インスリン比を指標に評価した。1.8mgの早期開始群では、遅延開始群に比べHOMA-Bの改善も有意に大きかった。早期開始群のベースラインからの変化は41.3%、遅延開始群は23.8%で、差は17.5パーセンテージポイント(95%信頼区間:5.7〜29.2、p=0.0037)。一方、1.2mg群とプラセボ群では差は有意にならなかった。

 プロインスリン:インスリン値のベースラインからの変化は、1.8mgが用いられた患者では早期開始群の方が好ましい傾向が見られたが、有意性はボーダーラインだった(p=0.0535)。1.2mg群とプラセボ群では差は有意にならなかった(p=0.6504とp=0.8130)。

 Matthews氏は、これらの結果から、「リラグルチド投与は、経口糖尿病治療薬を複数使用する前の早期に開始した方が、血糖改善効果が大きく、β細胞の機能の改善も期待できる」と結論付けた。

(日経メディカル別冊編集)