英国Hull York Medical SchoolのStephen L. Atkin氏

 既存の基礎インスリン製剤は1日1回決まった時間に投与する必要があり、患者にとって利便性が高いとは言えなかった。しかし、超持効型インスリンアナログ製剤であるインスリン degludec(IDeg)は、投与間隔が日によって変動した場合でも良好な血糖コントロールが得られ、低血糖の発現リスクも上昇しなかったとする臨床試験成績が報告された。9月12日から16日までリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD2011)で、英Hull York Medical SchoolのStephen L. Atkin氏が発表した。

 本試験は世界14カ国で実施された。対象は経口血糖降下薬(OAD)あるいは基礎インスリンを用いても血糖コントロール不良の2型糖尿病患者459人。対象患者を、投与時刻を固定せずにIDegを投与するIDeg Flex群(229例)とインスリン グラルギン(IGlar)を毎日同じ時刻(24時間ごと)に投与するIGlar群(230例)にランダムに割り付け、26週間投与した。IDeg Flex群の投与時刻は、毎日朝あるいは夜とし、投与間隔は8〜40時間の範囲とした。また、インスリン投与量は空腹時血糖値(FPG)が70〜89mg/dLとなるように調整した。

 本試験は、試験薬群と対照薬群の血糖コントロール目標値を同じに設定し、その条件下で低血糖の重症度あるいは発現頻度を比較するtreat-to-target方式で実施した。

 IDeg Flex群とIGlar群の背景は、それぞれ年齢が56.2歳と56.7歳、体重が81.3kgと82.1kg、HbA1c値が8.5%と8.4%、FPGは両群とも162mg/dLで、その他の背景因子を含めて群間差はなかった。また、試験開始前の糖尿病治療薬の内容は両群ともに、基礎インスリンが3%、基礎インスリン+OADが39%、OAD単独が58%と差はなく、OADの内訳にも違いはなかった。

 結果として、HbA1c値は両群で経時的に低下し、26週目のHbA1c値はほぼ同等だった。また、26週目のFPGはIGlar群に比べてIDeg Flex群で有意に低かった(群間差:−7.56mg/dL、p<0.05)。なお、体重の変化量には有意な差は認められなかった(群間差:0.27kg)。

 患者が自身で対応できなかった重症低血糖と自身で対応できたが血糖値が55.8mg/dL未満であった軽症低血糖を低血糖と規定すると、低血糖発現率には群間差はなく、夜間低血糖発現率は、有意差はなかったものの、IGlar群に比べてIDeg Flex群は23%低かった。

 以上の検討からAtkin氏は、「IDegは2型糖尿病患者に対し、投与間隔が8〜40時間と大きく変動しても、IGlarを毎日同じ時刻に投与する場合に比べて、血糖コントロールは同等で低血糖リスクも変わらず、夜間低血糖のリスクは低下傾向を示した」と結論した。急な外出や打ち忘れた場合などやむを得ない投与間隔の変動に対しても、安全かつ有効であることが示されたことは、患者にとって朗報と言えそうだ。

(日経メディカル別冊編集)