イタリアのPadova大学のC.Dalla Man氏

 インスリン抵抗性は、運動不足、加齢、肥満などで生じるミトコンドリアの機能不全と関連するとの報告がある。しかし、インスリン抵抗性がミトコンドリアの機能不全を引き起こすのか、その逆なのか、あるいは運動不足がインスリン抵抗性とミトコンドリアの機能不全の両方を引き起こすのかなど、詳しい機序についてはまだ分かっていない。そこで、様々な運動トレーニングが、インスリン抵抗性やミトコンドリアの酸素消費能に及ぼす影響について調べたところ、持久力トレーニングの実施によってミトコンドリアの酸素消費能の改善は見られたが、いずれの運動トレーニングによってもインスリン抵抗性の改善効果は見られなかったことが示された。9月12日から16日までリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD2011)で、イタリアのPadova大学のC.Dalla Man氏らが発表した。

 対象者は34人の若年者(平均年齢25歳、46%が女性)と31人の高齢者(平均年齢70歳、50%が女性)。1日1時間、週に5回の有酸素運動を行う持久力トレーニング群、負荷をかけた筋力トレーニングを週4回行うレジスタンストレーニング群、これらを組み合わせたコンバインド群に分けて8週間のトレーニングを行った。

 主要評価項目は、筋生検によるミトコンドリアの酸素消費能(High-resolution respirometryで測定)、および混合食の負荷試験におけるインスリン抵抗性、β細胞応答性、遊離脂肪酸(FFA)濃度。混合食は炭水化物50%、脂肪30%、蛋白質20%とした。評価はトレーニングの種類のほか、男女別、さらに若年者と高齢者でも比較を行った。

 その結果、ベースラインのインスリン抵抗性は、若年者と高齢者、男性と女性で違いは見られなかった。β細胞応答性は、高齢者の方が若年者よりも低かった。空腹時のFFA濃度は、「高齢者」「女性」で高かった。一方、食事負荷後のFFA濃度は「高齢者」「男性」で高かった。

 運動トレーニング後の主要評価項目を検討したところ、若年者の持久トレーニング群とコンバインド群で、トレーニング未実施群に対しミトコンドリアの酸素消費能の有意な上昇が認められた(ComplexI+IIステージ:持久トレーニング群でp=0.007、コンバインド群でp<0.001)。しかし、インスリン抵抗性やβ細胞応答性についてはいずれの運動トレーニング群でも有意な改善は認められなかった。

 これらの結果を受けてMan氏は、「持久トレーニング群とコンバインドトレーニング群では、インスリン抵抗性やβ細胞応答性の改善を伴わずに、ミトコンドリアの酸素消費能の改善効果が見られた。このことがどのような意味をもたらすのかは、今後の研究の課題だ」と語った。

 質疑応答では、「インスリン抵抗性を改善するために糖尿病患者に運動しなさいと指導していた医師にとっては、少し残念な結果かもしれない。今後も運動を続けるよう指導すべきか」との質問に対し、「ミトコンドリアの酸素消費能の改善効果は血糖を下げる上でも重要で、運動をするよう指導することは大切だろう。インスリン抵抗性の改善には、これらの運動を繰り返し長く続けることがカギかもしれない」と語った。

(日経メディカル別冊編集)