オランダ Univ Med Center GroningenのB.H.R. Wolffenbuttel氏

 認知と行動を結びつけて社会的行動を可能にする「実行機能」は、2型糖尿病患者の人では、糖尿病でない人よりわずかだが劣る可能性が示された。オランダの大規模コホート研究であるLifeLines試験による成果で、Univ Med Center GroningenのB.H.R. Wolffenbuttel氏らが、9月12日から16日までリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD2011)で発表した。

 糖尿病は、認知機能の低下と関係があることが知られ、高血糖とインスリン抵抗性が重要な役割を果たしていると考えられている。演者らは、自ら2型糖尿病と申告した人、あるいは新たに2型糖尿病と診断された人について、実行機能の実際を把握するために、非糖尿病の人との比較検討を行った。

 対象は、LifeLines Cohort試験の登録者から、30歳以上の1万24人を抽出した。LifeLines Cohor試験は、北オランダ地域の一般市民を対象に行っている大規模前向きコホートで、16万5000人の登録を目標とし、30年間のフォローアップを行う予定となっている。これまでに6万人以上の登録が終わっている。身体測定、血圧、心電図(ECG)、肺機能、終末糖化合物などのデータを蓄積し、健康状態、社会的活動、精神運動学習などのデータも把握することになっている。

 今回の検討では、糖尿病と自己申告した226人(自己申告群)、検査で空腹時血糖が7mmoL/Lであることにより新たに診断された121人(新規診断群)と、非糖尿病だった9677人(非糖尿病群)3群で比較した。

 実行機能の把握は、神経心理学的テストの1つであるRuff's Figural Fluency Test (RFFT)によって行い、Z‐スコアも求めた。解析では、年齢で補正し、ピアソンの相関係数を求め、重回帰分析を行った。

 その結果、参加者の平均年齢は49歳(標準偏差:11、幅:31-88)、58%が女性であった。RFFTの値は、非糖尿病群(9677人)で81±22、新規診断群(121人)で73±23、自己申告群(226人)で68±21だった(p<0.001)。それぞれの群の平均年齢は、順に49±11歳、56±11歳、59±11歳と群間で差があり、対照群(非糖尿病群)で低かった。

 対照群を「1」とした場合のRFFTのZ‐スコアをみると、自己申告群で−0.22±0.97(p=0.001)、新規診断群で−0.14±1.06(p=0.12)となった。

 また、対数変換したそれぞれの変数とRFFTとの関連をみたところ、空腹時血糖(r=−0.15)、HbA1c (r=−0.17)、年齢(r=−0.37)、BMI(r=−0.11)およびウェスト・ヒップ比(WHR、r=−0.13)は、有意に相関があった(それぞれp<0.001)。また、重回帰分析では、年齢、HbA1c、BMIおよびWHRは独立したRFFT値の予測因子であることが示された。

 Wolffenbuttel氏は、「年齢で補正後の実行機能をみると、糖尿病の患者は、そうでない人に比べてわずかだが劣る可能性が示唆された」と結論した。その上で、今後は教育レベルや社会経済状態との関連も調査する必要があるだろうとまとめた。

(日経メディカル別冊編集)