オランダ・VU大学メディカルセンターのE. van Duinkerken氏

 糖尿病患者は、アルツハイマー病AD)のリスクが約2倍高いとされる。そこで1型糖尿病患者を対象に、アルツハイマー病のバイオマーカーとされる脳脊髄液(CSF)を用いてADのリスクについて検討したところ、健常人と比べて1型糖尿病患者はCSF中のP-tauがやや増加傾向を示すなどの結果が得られた。9月12日から16日までリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD2011)で、オランダ・VU大学メディカルセンターのE. van Duinkerken氏らが発表した。

 対象者は、試験参加に応募した155人のうち腰椎穿刺に同意した53人(1型糖尿病患者38人、健常人15人)。

 CSF中のアミロイドβ(Aβ42)、総タウ(t-tau)、リン酸化タウ(P-tau181)、ADの危険因子とされるアポリポ蛋白Eε4(ApoEε4)の有無を調べた。AD患者においては、CSF中のAβは減少し、t-tauやP-tau181は増加するとされる。

 対象の平均年齢は、1型糖尿病・微小血管障害あり群(10人)が48.5歳、1型糖尿病・微小血管障害なし群(28人)が40.5歳、健常人群(15人)が39.9歳だった。

 CSF中のそれぞれのバイオマーカーの値について、1型糖尿病群と健常人群とで比較したところ、Aβ42およびt-tauにおいては有意な差はなかった(それぞれp=0.08、p=0.09)。しかしP-tau181については、1型糖尿病群でやや増加が見られた(p=0.05)。また1型糖尿病・微小血管障害あり群と微小血管障害なし群とで比較しても、いずれのマーカーにも差は見られなかった。

 1型糖尿病群で、ApoEε4を有する患者とApoEε4を持たない患者に分けて比較すると、ApoEε4を有する患者の方がAβ42がやや低い傾向(ADのリスクが高い)を示した(p=0.08)。

 「CSFを用いた今回の研究では、1型糖尿病群でADの進行を示す顕著な傾向は見られなかった。対象の年齢が平均42歳と若いことも影響しているかもしれない。今後、より高齢の患者や2型糖尿病患者についても同様の研究を行う必要があるだろう」と話した。

(日経メディカル別冊編集)