デンマークSteno Diabetes CenterのNanna Johansen氏

 2型糖尿病リスクの高い人では、HbA1c値の年間増加速度が、動脈硬化増悪の予測因子であるようだ。これは、デンマークSteno Diabetes CenterのNanna Johansen氏らが、約1000人を対象に行った試験で明らかにしたもので、9月12日から16日までリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD2011)で発表した。

 これまでに、糖尿病と高血糖症が動脈硬化に関与していることは知られていたが、HbA1c値の変化が動脈壁硬化に与える影響については不明だった。

 同研究グループは、2001〜2006年にかけて、家族歴、体格指数、運動量、高血圧症の有無などをもとに、2型糖尿病のリスクが高く、発症はしていない985人について、試験を行った。研究グループは被験者について、試験開始時点と7年後の追跡時にHbA1c値を、また追跡時のみに動脈硬化の指標である頸部大腿脈波伝播速度(PWV)を測定し、HbA1c値の変化とPWV値の関連について線形回帰分析を行った。

 被験者の平均年齢は59.9歳、56%が男性、平均追跡期間は7.1年だった。HbA1c平均値は試験開始時が5.7%、追跡時が5.9%、年間増加幅の平均は0.02%ポイントだった。

 追跡期間中に糖尿病を発症したのは200人で、そのうち糖尿病治療薬を服用したのは57%だった。

 線形回帰分析の結果、HbA1cの年間0.1%ポイント増大は、追跡時のPVW値0.22m/s(95%信頼区間:0.03‐0.42)増大に関連していた。年齢もまた、1年増加と追跡時のPVW値0.12m/s(同:0.10‐0.14)に関連していた。

 被験者のうち、糖尿病を発症しなかった人について見てみると、HbA1cの年間0.1%ポイント増大は、追跡時のPVW値0.27m/s(95%信頼区間:0.02‐0.52)増大に関連しており、非糖尿病患者においても同様な傾向が認められた。

 こうしたHbA1c増加のPVW値への関連は、試験開始時点のHbA1c値とは独立した因子だった。

 Johansen氏はこの結果を受けて、2型糖尿病のリスクの高い人では、HbA1c値のみならず、その増加速度もまた、動脈硬化といった大血管性変化に関与している可能性がある、とした。さらに、2型糖尿病ハイリスク群では、HbA1c値が糖尿病のカットオフ値未満でも、動脈硬化の予防にはHbA1c値のわずかな増大も避けるべきだとした。

 同氏はまた、一方で同試験結果は、糖尿病未発症のハイリスク群に対し、HbA1c値をコントロールすべきかどうか、PVW値のモニターを行うべきかどうか、といった疑問を投げかけている、と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)