イタリアTurin大学のFranco Cavalot氏

 2型糖尿病患者における長期心血管イベント死亡リスクの予測因子は、空腹時血糖値ではなく、食後血糖値であることが、14年間に及ぶ前向き試験で明らかになった。これは、イタリアTurin大学のFranco Cavalot氏らが、500人超の2型糖尿病患者について行った観察試験の成果で、9月12日から16日までリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD2011)で発表した。

 これまでに、健常者を対象に行った試験で、食後2時間の血糖値が、空腹時血糖値よりも、総死亡リスクに関するより強い予測因子であることは明らかになっている。Cavalot氏らもまた、これまでに、2型糖尿病患者を5年間追跡した試験で、食後血糖値は心血管イベント発生リスクの予測因子であることを示していた。

 同研究グループは、2型糖尿病患者505人について、試験開始時点で、空腹時血糖、朝食後2時間血糖、昼食後2時間血糖、夕食前血糖、HbA1cの5つの血糖コントロール指標を調べ、心血管イベントと総死亡との関連を分析した。追跡期間は、1995〜2010年で、14年間に及ぶものだった。

 被験者の平均年齢は62.2歳、男性が53.1%、糖尿病歴は平均9.4年、心血管イベント歴は16.8%に認めた。

 追跡期間中、死亡は被験者の29%にあたる147人、心血管イベントが発生したのは34%にあたる172人だった。

 Cox重回帰分析で、先の5つの指標をそれぞれ別々にモデルに入れた「モデル1」では、心血管イベント発生のリスク因子は、昼食2時間後血糖(測定値1単位増加によるハザード比:1.094、p<0.0001)と、夕食前血糖(同ハザード比:1.068、p=0.012)、HbA1c値(同ハザード比:1.223、p<0.0001)だった。総死亡のリスク因子は、朝食後2時間血糖(同ハザード比:1.110、p<0.0001)、昼食後2時間血糖(同ハザード比:1.122、p<0.0001)、夕食前血糖(同ハザード比:1.096、p=0.001)、HbA1c値(同ハザード比:1.314、p<0.0001)だった。

 回帰分析モデル2では、5つの指標をすべて考慮し、その後、変数減少法で有意な変数を残した。その結果、心血管イベント発生のリスク因子は、昼食後2時間血糖(同ハザード比:1.064、p=0.021)と、HbA1c値(同ハザード比:1.134、p=0.046)だった。総死亡についてもまた、リスク因子としてモデルに残ったのは、昼食後2時間血糖(同ハザード比:1.076、p=0.008)と、HbA1c値(同ハザード比:1.209、p=0.003)だった。

 回帰分析モデル3では、モデル2で残った変数と、年齢、性別、糖尿病歴、喫煙の有無、BMIといった、主な心血管疾患リスク因子を一緒にモデルに入れ、その後、変数減少法で有意な変数を残した。その結果、心血管イベント発生のリスク因子は、性別(男性の女性に対するハザード比:1.921、p=0.001)、年齢(1歳上がることによるハザード比:1.041、p<0.0001)、昼食後2時間血糖(同ハザード比:1.059、p=0.037)、HbA1c値(同ハザード比:1.201、p=0.007)だった。

 総死亡についてリスク因子として残ったのは、年齢(同ハザード比:1.116、p<0.0001)、性別(同ハザード比:1.610、p=0.006)、昼食後2時間血糖(同ハザード比:1.057、p=0.054)、HbA1c値(同ハザード比:1.263、p=0.001)、アルブミン排泄率(同ハザード比:1.001、p<0.0001)、トリグリセリド(同ハザード比:1.212、p=0.020)だった。

 いずれのモデルでも、空腹時血糖は、心血管イベント発生と総死亡のリスク因子ではなかった。一方で、いずれのモデルでも、昼食後2時間血糖とHbA1c値は、心血管イベント発生と総死亡リスクのリスク因子だった。中でも、モデル3の結果から、主な心血管疾患リスク因子とは独立したリスク因子であることが分かった。

 会場からは、「なぜ朝食後でなく昼食後血糖が有意だったのか」との質問があり、Cavalot氏は、「イタリアでは、朝食は軽く済ませ、昼食はたっぷり食べる習慣があるからだろう」と回答した。

(日経メディカル別冊編集)