イスラエル・テレアビブHelen Schneider Hospital for WomenのMoche Hod氏

 インスリン デテミルは、妊娠中の1型糖尿病患者でNPH製剤と同様、安全に用いることができ、周産期における胎児・新生児に与える影響という点ではNPHに対し、より良好な傾向があることが、17か国における1型糖尿病女性を対象とした前向きオープンラベルランダム化比較試験によって明らかになった。9月12日から16日まで、リスボンで開催中の欧州糖尿病学会(EASD2011)で、イスラエル・テレアビブHelen Schneider Hospital for WomenのMoche Hod氏が発表した。

 Hod氏らはこれまでに、超速効型のインスリン アスパルトについて安全性を確認し、ほぼ5年にわたって実臨床で用いている。今回の試験では、持効型のインスリン デテミル(IDet)の安全性と有効性を中間型インスリン(NPH)と比較した。

 妊娠を計画中、または妊娠8-12週の1型糖尿病患者を、IDet群と中間型インスリン(NPH)群に無作為に割り付けた。妊娠計画中の患者については、ランダム化の後、52週間以内に妊娠した患者のみを登録した。解析対象としたのは、IDet群152例、NPH群158例の計310例。このうちランダム化時点ですでに妊娠していた患者は、IDet群で79例(52%)、NPH群では83例(53%)だった。

 主要評価項目とした複合エンドポイントは次のとおり。出生児の低体重または過剰体重(その地域の妊娠週齢と性別に対する体重の10パーセンタイル未満または90パーセンタイル超)、早期産(37週未満)、早期死産(22週未満)、周産期死(22週以上、産後1週以内)、新生児死亡(生後7日以上28日以内の死亡)、先天性異常、出産後24時間の新生児低血糖(血糖値≦1.7mmol/L)のほか、母親、胎児、新生児におけるすべての有害事象とした。

 結果は、IDet群89例(62.7%)、NPH群96例(66.2%)が複合エンドポイントの何らかのイベントを経験した。NPH群に対するIDet群のオッズ比(OR)は、0.86(95%信頼区間:0.53-1.40、p=0.551)だった。

 早期産(37週未満)はIDet群11/142例(7.7%)、NPH 9/145例(6.2%)、早期死産(22週未満)はIDet 2/142例(1.4%)、NPH 1/145例(0.7%)で、新生児死亡(生後7日以上28日以内の死亡)や、追跡期間中の死亡は両群ともになかった。

 生児出産のアウトカムとしては、低体重(IDet群3例2%、NPH群1例1%)、過剰体重(IDet群59例46%、NPH群73例54%)、巨大児(4000gを超える:IDet群24例19%、NPH群35例26%)、新生児低血糖(IDet群15例12%、NPH群24例18%)などにおいて、有意差はないもののIDet群で良好な傾向であった。2群間の有害事象発現頻度(IDet群37%、NPH群35%)と児当たりの有害事象数(IDet群2.2、NPH群2.7)に有意差は認められなかった。

 Hod氏は、母体におけるインスリン デテミルの有効性と安全性についても、今回のEASD2011で報告した。その中では、妊娠36週においてHbA1cを指標とした有効性について、NPHに対する非劣性が示されたこと、空腹時血糖が24週、36週において有意に低かったこと、低血糖発現率は同等であったことなどに言及、「デテミルは妊娠中の1型糖尿病患者において、安全で有効」と結論した。

 なお、同氏らはこれらの結果を得て、すでに、デテミルを妊娠女性の糖尿病治療に用いている。妊娠クリニックにおいては、妊娠時にHbA1cが6%未満となるよう指導し、妊娠前からインスリン投与を開始するという。

(日経メディカル別冊編集)