大石内科クリニック院長の大石まり子氏

 2型糖尿病の治療では、以前に比べて心血管リスク因子の厳格かつ包括的な管理が行われるようになった。大石内科クリニック(京都市)院長の大石まり子氏らは、最近になって治療を受けた2型糖尿病患者を対象としたコホート研究を行い、以前、実施されたコホート研究の結果に比べて2型糖尿病患者の心血管疾患発症リスクが低かったことを明らかにした。研究成果は、9月12日から16日までリスボンで開催されている欧州糖尿病学会(EASD2011)で発表した。

 本研究には、糖尿病データマネージメント研究会(JDDM)に所属する全国17カ所のプライマリケア医療施設が参加。2004年から2005年にかけて登録された心血管疾患の既往がない2型糖尿病患者2984例を対象とした。対象者には日本糖尿病学会が推奨する包括的なリスク管理を行い、心血管疾患と心血管疾患死の発生リスクを4年間追跡した。

 得られた結果は、心血管リスクをアウトカムとして1977年から2000年にかけて相次いで追跡が実施された欧米・豪州の糖尿病患者コホート研究(DAI、ARIC、FIELD、UKPDS)と比較した。

 その結果、JDDMの対象者は、比較対象とした4つの患者コホートに比べて、糖尿病罹患期間が11年と長く、BMIは24.7kg/m2と低く、HbA1c値(NGSP値)は7.5%と高かった。また、高血圧合併率は47%と低く、収縮期/拡張期血圧は129/75mmHgと低値で、LDLコレステロール値は115mg/dLと低く、HDLコレステロール値は55mg/dLと高かった。しかし、喫煙率は31%とUKPDSと同様、他のコホートよりも高かった。

 JDDMの脱落率は6.2%と完遂率は高かった。追跡期間中、90人が心血管疾患を発症し、5人が死亡した。1000患者・年当たりの発生率を求めると、冠動脈疾患は4.4、虚血性脳卒中3.1、末梢動脈疾患0.7、心血管死亡0.5となった。他の患者コホートでは、冠動脈疾患が10.8〜30.3、脳卒中5.6〜6.8、末梢動脈疾患2.3〜4.2、心血管死亡1.8〜7.6だったのに比べて有意に低かった(p<0.01)。

 人種別にみた2型糖尿病患者の冠動脈疾患発生リスクは、白人では10〜30(1000患者・年当たり、以下同)、日本人では6.9〜9.4、虚血性脳卒中については白人で5〜7、日本人で9.3〜11.3と報告されており、今回のJDDMコホートの方が心血管疾患の発生リスクは低かった。

 多変量解析の結果、心血管イベントの発症に関連する有意なリスク因子は、年齢、糖尿病罹患期間、HbA1c、HDLコレステロール、尿中アルブミン/クレアチニン比の5つだった。

 以上の結果から大石氏は、「近年の管理目標値の厳格化と包括的な心血管リスク管理によって、2型糖尿病患者の心血管疾患の発生リスクは低下したと考えられる。そこには、以前よりも進歩した治療法や月に1度の診療による血糖値や血圧の良好な管理など、日本特有の要因も貢献している可能性がある」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)

■訂正
・9月17日に以下の点を訂正しました。
 第4段落に「拡張期/収縮期血圧は129/75mmHgと低値」とありましたが、「収縮期/拡張期血圧は129/75mmHgと低値」の誤りでした。お詫びして訂正します。