デンマークAarhus大学のTroels Hansen氏

 2型糖尿病心筋梗塞を発症した人において、補体活性経路の最終産物である可溶性後期複合体(sC5b-9)の血清濃度が高いと、長期の心血管イベント発生リスクは、血清濃度が低い人のおよそ1.3倍程度に増大することが分かった。これは、スウェーデンKarolinska InstitutetのLinda Mellbin氏らが、約400人について2年超にわたり追跡し明らかにしたもの。成果は、9月12日からリスボンで開催中の欧州糖尿病学会(EASD2011)で、共同研究者のTroels Hansen氏(デンマークAarhus大学)が発表した。

 同研究グループは、補体系の過度な活性は、2型糖尿病で心筋梗塞の患者のアウトカムを増悪させる、という仮説を立て、補体活性経路の最終的な産物であるsC5b-9に着目し同試験を行った。

 試験では、心筋梗塞が疑われる2型糖尿病患者を対象に行った比較対照試験であるDIGAMI2の被験者のうち、入院時の血清sC5b-9値と結合レクチン-関連セリンプロテアーゼ-2(MASP-2)値が得られた397人について、その後のアウトカムとの関連を分析した。被験者の年齢中央値は69歳、男性は68%、追跡期間の中央値は2.4年だった。主評価項目は、心血管疾患死、または非致死の心筋梗塞か脳卒中のいずれかだった。

 追跡期間中、いずれかの心血管イベントが発生したのは141人だった。

 解析の結果、血清sC5b-9値の中央値は、男性が130μg/Lに対し、女性は152μg/Lと有意に高かった(p=0.02)。また、年齢が高い程、クレアチニンクリアランスが低い程、血清sC5b-9値は高かった(いずれもp<0.001)。

 血清sC5b-9値と心血管イベント発生リスクについて見てみると、血清sC5b-9値が高い程、同リスクは高かった。血清sC5b-9値の高い方から3分位群は、低い方から3分位群に比べ、同イベント発生に関する補正前ハザード比は1.37(95%信頼区間:1.13‐1.65、p=0.001)だった。Cox重回帰分析を行い、年齢、クレアチニンクリアランス、体格指数、心筋梗塞歴などについて補正を行った後も、同ハザード比は1.30(同:1.02‐1.66、p=0.04)と、有意に高かった。なお、入院から3カ月後の血清sC5b-9値と心血管イベント発生リスクには、有意な関連は認められなかった。

 一方、血中MASP-2値については、補正前には同イベント発生の有意な独立予測因子だったが、補正後に有意性は失われた。

 Hansen氏はこの試験結果を受けて、「補体系の活性は、2型糖尿病患者における虚血性心疾患の病因と関連している可能性がある」と結んだ。

 会場からは、「なぜ入院3カ月後の血清sC5b-9値と心血管イベント発生には有意な関連が見られなかったのか」との質問があった。これに対しHansen氏は、「平常の血清sC5b-9値はあまり重要ではなく、(心筋梗塞が)発生している時点での値が重要なのだと考える」と回答した。

(日経メディカル別冊編集)