デンマークHerlev大学のPernille Holmager氏

 心不全患者において、中央領域プロアドレノメデュリンMR-proADM)の血中濃度が高いと、糖尿病の有無にかかわらず、長期の死亡リスクが増大することが分かった。また、血中MR-proADM値は、心不全患者の中でも、2型糖尿病と腎障害のある人では、そうでない人に比べ、有意に高濃度であることも示された。デンマークHerlev大学のPernille Holmager氏らが、約370人の心不全患者について行った前向き観察試験により明らかにしたもので、9月12日からリスボンで開催中の欧州糖尿病学会(EASD2011)で発表した。

 MR-proADMは血管から分泌されるペプチドで、心血管疾患や2型糖尿病の血管障害に関するバイオマーカーの可能性があることが知られている。これまでに、心不全患者を対象にし、血中MR-proADM値と死亡リスクとの関連を示した短期の試験結果はあるが、2型糖尿病患者を対象にした長期の試験はこれが初めてという。

 同研究グループは、2001〜2009年に心不全外来を訪れた366人について、55カ月(中央値)にわたり追跡を行った。被験者の平均年齢は70歳、31%が女性、62%が虚血性心疾患、19%が2型糖尿病との診断を受けていた。また、糖尿病患者の23%にあたる16人で、微量アルブミン尿が認められた。

 主要評価項目は、総死亡と、死亡または入院の複合エンドポイントだった。追跡期間中の死亡は189人(51.6%)、入院は232人(63.4%)に上った。

 その結果、血中MR-proADM値は、被験者のうち、2型糖尿病で尿中アルブミン・クレアチニン比が30mg/g以上の腎障害の人では平均1.12nmoL/Lと、心不全のみの人の0.75nmoL/L、心不全で2型糖尿病の人の0.84nmoL/Lに比べ、いずれも有意に高値だった(p=0.014)。

 血中MR-proADM値とアウトカムについて見てみると、被験者全体の9年生存率は、血中MR-proADM値が0.56nmoL/L未満の群では約65%だったのに対し、0.56〜0.83nmoL/Lでは約35%、0.83nmoL/L超では約15%と、値が高いほど生存率は有意に減少した(p<0.001)。被験者のうち、2型糖尿病の9年生存率について見てみると、血中MR-proADM値が0.71 nmoL/L未満の群では約40%だったのに対し、0.71 nmoL/L超の群では約10%と有意に低率だった(p=0.03)。

 また、Cox比例ハザード分析の結果でも、logMR-proADM値が1標準偏差増大することによる、被験者全体の総死亡に関する、年齢・性別のみ補正後のハザード比は1.5(95%信頼区間:1.2‐1.8)に上った(p<0.001)。クレアチニン値、心不全NYHA分類、糖尿病や虚血性心疾患の有無、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)などで補正を行った後も、logMR-proADMは総死亡リスクに関する有意な予測因子で、1標準偏差増大することによるハザード比は1.3(同:1.1‐1.5、p=0.004)だった。

 被験者のうち、2型糖尿病患者について見てみると、年齢と性別を補正した後、logMR-proADMが1標準偏差増大することによる総死亡に関るハザード比は1.5(同:1.1‐2.1、p<0.001)だった。

 一方、死亡または入院については、補正前にはlogMR-proADMが1標準偏差増大することによるイベント発生に関するハザード比は1.3(同:1.1‐1.4、p=0.06)だったが、補正後は有意な関連は認められなかった。

 Holmager氏は、「血中MR-proADM値は、心血管疾患や2型糖尿病患者において、従来の臨床的リスク因子やNT-proBNPとは独立した新たなリスク因子の可能性がある」と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)