2型糖尿病の治療には、生活習慣の改善から種々のインスリン療法まで多岐にわたる選択肢があるが、それらを一堂に比較した試験はない。そうしたなか、米ブルックリン・SUNYドンステート医療センターのMary Ann Banerji氏らは、背景因子にほぼ差がない患者を対象に、インスリングラルギンと他の治療法を比較した無作為化比較試験(RCT)のデータを統合解析した結果、経口血糖降下薬(OAD)でコントロール不良の患者を対象とした場合、グラルギンは他の選択肢より良好もしくは少なくとも同等の効果を有し、最も低血糖をきたしにくい治療法であることが示唆された。この研究結果は、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催された第46回欧州糖尿病学会EASD2010)で発表された。

 今回Banerji氏らが解析の対象としたRCTは、1977年から2007年に実施されたインスリングラルギンと他の治療法とを比較した試験のうち、(1)追跡期間が24週以上、(2)試験対象が、1剤以上のOADでコントロール不良の成人2型糖尿病患者、(3)追加インスリンの併用はせずグラルギンの1日1回投与のみ、(4)空腹時血糖(FPG)100mg/dL未満を目標とし、予め定められたプロトコールに従ってグラルギンが増量されている、という4つの条件を満たす試験である。

 結果、上記の条件を満たす9つのRCTが同定され、グラルギン群1462人、対照群1476人の計2938人のデータが集積された。患者の平均年齢はグラルギン群57.2歳、対照群57.1歳、平均罹病期間は両群ともに8.6年、ベースラインにおけるHbA1c平均値は両群ともに8.7%、BMI平均値は両群ともに31.6kg/m2であった。

 対照群における治療法の内訳は、生活習慣の改善(1試験;n=83)、OADの強化(3試験;n=482)、NPHインスリン(2試験;n=429)、インスリンリスプロ(1試験;n=204)、混合型インスリン:Mix(2試験;n=278)であった。

 これらの患者のデータを統合し、両群における24週後のHbA1c値7.0%以下を達成した割合を算出すると、グラルギン群は57.7%で、対照群(51.4%)より有意に高率であった(オッズ比1.353、p<0.001)。同様に、24週後にHbA1c値が 1%以上低下した患者の割合もグラルギン群の方が有意に高率であった(76.5% 対 70.3%;オッズ比1.415、p<0.001)。

 また、対照群の治療法ごとにHbA1c値7.0%以下の達成率を比較すると、グラルギンと生活習慣の改善の1試験(78.2% 対 49.4%;オッズ比3.824)、グラルギンとOADの3試験(55.2% 対 44.0%;オッズ比1.690)においては、グラルギン群で有意に達成率が高かった(ともにp<0.01)。また、グラルギンとNPHの2試験(58.7% 対 55.9%;オッズ比1.930)、グラルギンとリスプロの1試験(65.2% 対 73.0%;オッズ比0.685)、グラルギンとMixの2試験(48.1% 対 41.7%;オッズ比1.392)では、いずれも両群間に有意差はなかった。

 同様に、24週後にHbA1c値が1%以上低下した患者の割合についても、グラルギンは生活習慣の改善やOADより優勢であったが、NPH、リスプロ、Mixとは有意差はなかった。以上のことから、グラルギンの血糖コントロール効果は、生活習慣の改善や経口薬より優れ、NPHやリスプロ、Mixと同等であることが示唆された。

 さらに、血糖降下効果が「同等」であったインスリン製剤間における低血糖の発現頻度を比較すると、グラルギンとNPH(12.25件/人・年 対 15.37件/人・年)、グラルギンとリスプロ(4.39件/人・年 対 15.98件/人・年)、グラルギンとMix(6.85件/人・年 対 10.95件/人・年)のすべての比較において、グラルギンのほうが有意に低率であった(それぞれp=0.032、p<0.001、p=0.004)。

 2型糖尿病患者の治療において、グラルギンは他の治療法より良好、もしくは少なくとも同等の効果を有し、効果が同等のインスリン療法の中では最も低血糖をきたしにくいことが示唆された。Banerji氏は、「この知見は単一のRCTによって得られたものではなく、その解釈には限界があるが、OADでコントロール不良の患者に対する治療の選択肢を検討する際の参考となろう」と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)