オランダ、セント・アントニウス病院のFred Storms氏

 Basal-Bolus療法混合型インスリン(Mix)2回打ちより血糖コントロールに優れることが複数の無作為化比較試験によって示されているが、Mix 2回打ちによる血糖コントロール不良例に対し、Basal-Bolusに切り替えた場合の成績を検討した報告はほとんどない。その数少ない検討であるATLANTIC studyの結果が、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催された第46回欧州糖尿病学会EASD2010)にて報告された。発表者であるオランダ、セント・アントニウス病院のFred Storms氏(写真)らは、切り替えから6カ月でHbA1c値は1.7%低下し、治療に対する患者の満足度も有意に改善されたと報告した。

 ATLANTIC studyは、オランダおよびベルギーの“real world”におけるインスリンレジメンを切り替えた患者を追跡した前向き観察研究である。対象は、混合型インスリン1日2回打ち(Mix2回投与レジメン)で治療中の2型糖尿病患者で、血糖コントロール不良のためBasal-Bolusレジメンへの切り替えを行った214人である。用いられたインスリン製剤は、Basalがすべてインスリングラルギン、Bolusは81.7%がインスリングルリジン、8.9%がレギュラーヒトインスリン、8.5%がインスリンアスパルトであった。

 追跡期間は6カ月間とされ、主要評価項目であるHbA1c値7.0%未満の達成率をはじめ、空腹時血糖(FPG)や血糖自己測定(SMBG)データの推移、体重変化、安全性に加え、治療に対する患者満足度などが検討された。

 その結果、ベースライン時に平均9.2%であったHbA1c値は、6カ月で7.5%に低下し(p<0.0001)、3.3%にすぎなかったHbA1c値7.0%未満の達成率は24.9%まで上昇した(p<0.0001)。また、FPGは187mg/dLから140mg/dLへ、SMBG(7ポイントの平均)は195mg/dLから153mg/dLへと低下した(いずれもp<0.0001)。

 一方、体重は89.5kgから90.4kgへとわずかに増加したが、有意な変化ではなかった。また、33.9%の患者で夜間低血糖の頻度が減少し、27.8%の患者で重篤な低血糖頻度が減少していた(ともにp<0.0001)。一方、低血糖頻度が増加した患者は、夜間低血糖で1.8%、重篤な低血糖が2.5%であった。

 こうした臨床データの改善を反映するかのように、現在の治療に対する患者の満足度を尋ねるDTSQs(diabetes treatment satisfaction questionnaire status version;最低0〜最高48)スコアは、ベースライン時の21ポイントから6カ月後の27.6ポイントへと著明に上昇(p<0.0001)、治療の変更に対する満足度を尋ねるDTSQc(DTSQ change version;最低-24〜最高+24)のスコアも10.4ポイントと良好であった。

 以上の結果より、Mix 2回投与レジメンにて血糖コントロール不良である2型糖尿病患者に対するBasal-Bolusレジメンへの切り替えは、安全性を損なうことなく血糖コントロールを改善し、患者の満足度を改善する方策であることが示唆された。

 Storms氏らは、Basal-Bolusレジメンへの切り替えで頻回注射による煩雑さが増すにもかかわらず、患者の満足度が高まることについて、「患者自身も、多少の手間よりは体重増加や低血糖リスクの増加を伴うことなく良好な血糖コントロールが得られることのメリットの方が重要だと考えているのだろう」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)