フランス・サンテマルグレーテ大学病院のDenis Raccah氏

 基礎インスリンのみで血糖コントロール不良の2型糖尿病患者への次なる手だてとしてはBasal-Bolusが有用であるが、血糖変動をにらみながらインスリン量を調節することは容易ではない。そこで、フランス・サンテマルグレーテ大学病院のDenis Raccah氏(写真)らは、メトホルミンを併用しながらまず1日1回の超速効型インスリンを追加し段階的に増量していくレジメンと、最初から3回/日、最大量の超速効型インスリンを追加するレジメンを比較検討したOSIRIS試験を実施した。その結果、段階的強化レジメンは、Basal-Bolusにほぼ匹敵する効果と安全性が得られたことを、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催された第46回欧州糖尿病学会EASD2010)で報告した。

 OSIRIS(The Opposing Step-by-step Insulin Reinforcement to Intensified Strategy)試験の対象は、基礎インスリン療法に2種類以上の経口血糖降下薬を併用しているにもかかわらず、血糖コントロール不良(HbA1c平均値9.1%、空腹時血糖;FBG174.6mg/dL)の2型糖尿病患者811人である。このうちインスリングラルギンと経口血糖降下薬による6カ月間の前治療期間後にHbA1c値>7.0%、かつFPGが比較的良好(120.6mg/dL以下)な476人の患者を3グループに無作為に割り付けた。

 グループ1の患者(n=144)に対しては、1日1回のグラルギンとメトホルミンに加え、食後血糖値(PPG)110〜160mg/dLを目標に、毎食前にインスリングルリジンを投与した。グループ2の患者(n=197)には、1日1回のグラルギンとメトホルミンに加え、3食のうち最もPPGが高い食前のみにグルリジン投与を開始し、同様のPPGを目標に4カ月後にグルリジンを1日2回、8カ月後に1日3回の最大量を投与するという段階的増量がなされた。また、グループ3の患者(n=123)には、グループ2と同様のレジメンに加え、3食のうち最もPPGの高い食事に合わせて経口インスリン分泌促進薬が投与された。

 12カ月間の追跡の結果、各群のHbA1c値は、グループ1では8.5%から7.7%へ、グループ2では8.4%から7.9%へ、グループ3では8.3%から7.9%へとそれぞれ低下したが、グループ間に差は認められなかった。今回検討された、段階的に超速効型インスリンを増量するレジメンのグループ2と通常のBasal-Bolusレジメンであるグループ1の差に関して解析した結果、per protocol解析では非劣性域内にあったが、intention-to-treatでは域外となり、グループ2の非劣性は証明できなかった。

 しかし、追跡期間中に低血糖症状を呈した数は、グループ1の4.36件/人・年、グループ3の5.43件/人・年に対し、グループ2では4.23件/人・年と最も低率であった。また、グループ1は2.03kg、グループ3は1.92kgの体重増加が認められたが、グループ2では1.29kgの増加にとどまり、グループ1との間に有意な差を認めた(p<0.05)。

 なお、12カ月後のグラルギンの用量は、グループ1が37単位、グループ2と3は40単位であり、3グループともほぼ同等であったが、グルリジンの用量はグループ1の29単位に対し、グループ2は20単位、グループ3は17単位であった。

 以上の結果よりRaccah氏らは、「メトホルミン併用下でのインスリン段階的強化法は、通常のBasal-Bolusにほぼ匹敵する効果を有するだけでなく、低血糖症状や体重増加を来たす患者が比較的少ないという付加的な価値を持つレジメンである」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)