アルゼンチン・Centro de Endocrinologina Experimentaly AplicadaのJuan Jose Gagliardino氏

 一般に糖尿病の患者教育は追加的な位置づけとされがちだが、患者教育を受けている人では受けていない人に比べ、薬剤などの使用状況は同じでも、治療効果が有意に高いことが示された。アフリカ、アジア、東ヨーロッパ、中東、中南米の27カ国で実施されている国際的な多施設観察研究(IDMPS試験)により明らかになった。アルゼンチン・Centro de Endocrinologina Experimentaly AplicadaのJuan Jose Gagliardino氏(写真)が、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催された第46回欧州糖尿病学会EASD2010)で報告した。

 糖尿病の治療目標を達成できるかどうかは、患者自身が治療に積極的に参加するかどうかによるところが大きい。糖尿病の治療に対する教育の重要性は認識されているものの、多くの国では教育は、「追加的」という位置付けになっている。そこで、Gagliardino氏らは、教育を受けている2型糖尿病患者と受けていない患者における糖尿病のコントロール状態と薬剤などの使用状況の変化を調べた。

 IDMPS(International Diabetes menagement practices study)試験は、途上国における糖尿病患者の管理実態を明らかにするために、アフリカ、アジア、東ヨーロッパ、中東、中南米の20カ国以上で実施されている国際的な多施設観察研究。治療指針や治療成績、医療費など様々なテーマについて、18歳以上の1型と2型の糖尿病患者からデータを収集、分析している。調査は1つのテーマごとに、2週間の患者登録とその後の観察(登録と観察期間を合わせて9カ月)で構成される。

 今回Gagliardino氏らは、2006年11〜12月の間に、教育を受けている患者と教育を受けていない患者をそれぞれ5692人ずつ選んで、治療の効果や薬剤などの使用状況を調べた。各群の年齢、性別、糖尿病の期間、体重やBMI、血圧、血糖値、薬剤の使用状況などを合わせて対象を選んだ。そして、9カ月後の各群の状態を比較した。

 両グループの基本データは、平均年齢は、両群ともに57.7±11.1歳、糖尿病の罹病期間は教育群で8.1±7.0年、非教育群で8.0±7.0年だった。正常BMIは教育群27.2対非教育群28.5%、HbA1c 7.0%未満は38.1対35.8%、LDLコレステロール100mg/dL未満は39.5対33.0%、トリグリセリド150mg/dL未満は52.7対49.0%だった。

 分析の結果、登録9カ月後に教育群が専門医のところへ診察を受けに行く回数は、非教育群よりも21%多く、インスリン治療、空腹時と食後の血糖自己測定も、それぞれ40%、10%、52%多かった。また、薬剤の使い忘れは、教育を受けた患者で15%少なかった。

 教育群と非教育群で薬剤の使用状況を比べたところ、教育群では経口薬のみが70.3%、インスリン治療(経口薬の併用も含む)が25.0%、食事療法と運動が4.7%だった。一方、非教育群では経口薬のみが61.6%、インスリン治療(経口薬の併用も含む)が34.9%、食事療法と運動が3.5%であり、両者に差はなかった。

 Gagliardino氏は、「これらのデータは、糖尿病教育が治療結果を有意に改善するとともに、薬剤の使い忘れを減らすことができることを示している」などと述べ、教育が糖尿病治療の質を改善する効率的なツールであるとして、「糖尿病の世界的な蔓延の中、最も事態の深刻な発展途上国にとって(患者教育は)特に重要である」と強調し発表を締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)