ドイツ医薬品評価研究所(GIDE)のRenate Quinzler氏

 多くの2型糖尿病患者が、経口血糖降下薬のみの治療からBOTbasal supported oral therapy)へ、そしてインスリン頻回注射へという過程をたどる。しかし、良好な血糖コントロールが維持できていれば、レジメンの煩雑さや低血糖リスク、そして医療経済的な面からみても、BOTからインスリン頻回注射への移行はできるだけ食い止め、すこしでも長くBOTにとどめることが得策だ。ドイツ医薬品評価研究所GIDE)のRenate Quinzler氏(写真)らは、BOTを開始した患者の継続状況と、頻回注射への移行を助長するリスク因子の解析を進めた結果、NPHベースのレジメンよりインスリングラルギンベースのレジメンの方がBOTの継続率が高く、継続日数も長かったことを、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催された第46回欧州糖尿病学会EASD2010)で報告した。

 今回の解析の対象は、GIDEのデータベースに登録された2型糖尿病患者のうち、2003〜2006年に新たにBOTを開始した患者9万7976人である。うち6万1053人がグラルギンベースのBOTレジメンによる治療を受けており(GLA群)、3万6923人がNPHベースのBOTレジメンによる治療を受けていた(NPH群)。

 これらの患者の2007年末までのデータを追跡すると、その間にNPH群の48.7%、GLA群の44.4%がインスリン頻回注射へと移行していた。その移行後の治療レジメンの割合は、BolusのみがGLA群で4.0%、NPH群で5.2%、混合型がGLA群で17.9%、NPH群で17.1%、Basal-BolusがGLA群で22.1%、NPH群で26.3%という内訳であった。

 また、両群における平均BOT継続日数は、GLA群が373日、NPH群が305日であった。未補正ハザード比(HR)は1.25(99%信頼区間:1.22-1.28)となり、NPH群の患者がインスリン頻回注射に移行するリスクはGLA群より25%高いことが示された。

 なお、インスリン頻回注射への移行と関連する他の交絡因子としては、担当医師の専門性、加入している医療保険会社、併用している経口血糖降下薬の数などが挙げられた。しかし、これらの交絡因子について補正した場合も、NPH群とGLA群のHRは1.17(99%信頼区間:1.14-1.20)であり、依然として有意であった。

 以上のように、NPHベースのレジメンでBOTを開始した患者は、グラルギンベースのレジメンでBOTを開始した患者に比べてインスリン頻回注射に移行する確率が高く、移行時期も早くなる可能性が高いことが示された。Quinzler氏らは、「長期的な視野に立てば、NPHベースのBOTレジメンよりもグラルギンベースのBOTレジメンを選択する方がよりメリットが大きい」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)