英ニューキャッスル大学のPhilip Home氏

 インスリン療法による心血管イベント予防効果を検討する大規模観察研究・CREDIT試験の追跡1年後のデータが報告された。HbA1c値は平均1.8%低下し、3人に1人がHbA1c値7.0%未満を達成、脂質プロファイルも改善傾向にあった。一方で、いまだ多くの患者が血糖コントロールに苦慮し、体重増加もみられるなど、問題点も浮き彫りになった。9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催された第46回欧州糖尿病学会EASD2010)にて、英ニューキャッスル大学のPhilip Home氏(写真)らが発表した。

 CREDIT(the Cardiovascular Risk Evaluation in people with Type 2 Diabetes mellitus on Insulin Therapy)試験は、日本も含めた12カ国・314施設によるreal-worldの大規模観察研究である。インスリン療法による心血管イベント発症率に及ぼす影響を検討する。対象は、最近インスリン療法を開始した2型糖尿病患者3031人で、インスリン製剤の種類は問わない。導入時レジメンの内訳は、基礎インスリン単剤が51.6%、基礎インスリン+速効型が14.6%、速効型単剤が7.3%、混合型が23.1%、その他が3.4%であった。

 今回報告されたのは、対象患者3031人のうち1年間の追跡が可能であった2734人の解析である。レジメンの内訳は、基礎インスリン単剤と速効型単剤の割合がやや減少し、それぞれ41.3%と3.3%となった。一方、基礎インスリン+速効型と混合型がそれぞれ20.8%、26.7%とやや増加していたが、75.0%の患者は導入時と同じレジメンを継続していた。インスリン投与量は、ベースライン時の20.2単位/日から35.7単位/日へと増加していた。

 HbA1c値はベースライン時の9.5%から7.7%へと有意に改善し(p<0.001)、32.1%の患者がHbA1c値7.0%未満を達成した。また、空腹時血糖(FPG)は207.9mg/dLから142.2mg/dLへ、食後血糖値は256.2mg/dLから173.1mg/dLへと有意に減少した(ともにp<0.001)。

 また、脂質プロファイルにおいても、総コレステロールは201.0mg/dLから189.4mg/dLへ、LDL-コレステロールは112.1mg/dLから104.4mg/dLへ、中性脂肪は194.1mg/dLから158.8mg/dLへとわずかながら有意な低下を認めた(すべてp<0.001)。ただし、HDL-コレステロールについては変わらなかった。

 一方で、患者の平均体重はベースライン時の79.9kgから81.3kgへと有意に増加していた(p<0.001)。また、20%の患者で低血糖症状が報告され、2%の患者は1回以上の重篤な低血糖発作を起こしていた。

 以上のように、インスリン導入から1年たった患者の治療継続性は良好であり、HbA1cやFPG、PPGといった血糖コントロール指標は順調に改善していた。さらに、脂質プロファイルの改善も認められ、まずは順調なスタートとなった。

 しかし、3分の2の患者はいまだHbA1c値7.0%未満を達成できていないことに加え、脂質プロファイルの改善も十分とは言えず、今後の血糖降下戦略、脂質低下戦略には改善の余地があると考えられた。また、重要な心血管危険因子である肥満の進行に対する対策も今後の課題として残された。

(日経メディカル別冊編集)