ドイツのテュービンゲン大学のA. Peter氏

 糖尿病の診断にHbA1c値を用いる際は、限界があることを知っておくべき――。診断指標にHbA1c値を用いた場合と空腹時血糖および糖負荷試験後の血糖値を用いた場合のそれぞれについて糖尿病診断能を比較検討したコホート研究により、HbA1c値による診断にも限界があることが示された。ドイツのテュービンゲン大学のA. Peter氏(写真)らが、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催された第46回欧州糖尿病学会EASD2010)で発表した。

 米国糖尿病協会(ADA)の勧告により、糖尿病の新しい診断基準にHbA1cが取り入れられた。日本でも指標の1つに加えられたばかり。ただ、これまでも、ヘモグロビンの糖化は複雑な過程をたどることから、その値は遺伝、人種および環境要因あるいはヘモグロビンの代謝速度などに左右されることが指摘されてきた。

 そこで演者らは、糖尿病発症の危険性が高いコホートにおいて、診断指標にHbA1c値を用いた場合と空腹時血糖および糖負荷試験後の血糖値を用いた場合のそれぞれについて糖尿病診断能を比較検討した。

 対象は、2型糖尿病を発症する危険がある白人2036人。試験では、75g糖負荷試験(OGTT)を実施するとともに、空腹時血糖、HbA1c値などの測定も実施した。HbA1c値は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法(Tosoh A1c2.2)で測定した。なお、測定にかかわる標準水準は良好で、すべて許容範囲内であった。

 経糖負荷試験の結果、1523人が耐糖能正常(NGT)に、387人が耐糖能異常(IGT)または空腹時血糖異常(IFG)に、126人が糖尿病に分類された。

 ADA勧告に従いHbA1c値のカットオフ値である6.5%を用いて糖尿病を診断したところ、糖負荷試験によって糖尿病と分類された人の53%が「HbA1c6.5%以上」に当てはまらず、糖尿病とは診断されなかった。

 このコホートでは、HbA1c6.5%未満であった全糖尿病患者のうち65%は、空腹時血糖ではなくOGTT(2時間血糖値)により同定された。糖尿病患者のうち39%のHbA1c値は、5.7〜6.5%の範囲に収まっていた。これらの患者を糖尿病と診断するためには、HbA1c値が5.7〜6.5%だった患者の3分の1は、OGTTによる再検査が必要であった。なお、糖尿病患者全体の7分の1は、HbA1c値が5.7%以下であった。

 こうしたデータをもとに、HbA1c値カットオフ値6.5%の特異度と感度を求めたところ、特異度は98.7%と高かったものの、感度は46.8%と低かったことが分かった。これは、50%以上の糖尿病患者を見逃すことになりかねないことを意味している。

 演者らは、食後に血糖値が上昇する人の中には糖尿病と診断され治療されなければならない人もいるが、HbA1c値だけでは把握できない可能性が高いと指摘。「HbA1c値による診断は簡便であるが、その診断には限界があることを知って対処すべき」などと考察した。

(日経メディカル別冊編集)